「演劇のまち」再建へ奮闘 七尾・中島町で無名塾がボランティア

災害ごみの片付け作業に励む赤羽さん(右)=13日午前、七尾市中島町

 俳優仲代達矢さん主宰の劇団「無名塾」に所属する俳優が、能登半島地震で被災した七尾市中島町でボランティアに奮闘している。約40年前から合宿や公演を続けている中島町は無名塾の塾生にとっては「第二の故郷」で、住民とともにつくり上げた「演劇のまち」の再建に向け、恩返しの気持ちで作業に励んでいる。

  ●被災家屋で片付け

 中島町では地震で多くの商店や住宅が被害を受けたほか、無名塾が定期的に公演する能登演劇堂も被災。照明などの舞台設備が破損し、休館している。一部地区では断水が続き、住民は不便な生活を余儀なくされている。町の高齢化も進んでおり、被災家屋の片付けに人手が不足している。

 このため、塾生は今月3日から本格的なボランティア活動を始め、これまで世話になった店舗を中心に作業に取り組んでいる。

 13日には、昨年10、11月に国民文化祭の関連事業として演劇堂で上演された「等伯―反骨の画聖―」で、長谷川等伯役を務めた赤羽秀之さん(57)ら5人が作業。創業100年以上の日本料理店「五十番」では、被害を受けた家具や食器、家電などを外に出して分別し、トラックで災害ごみ置き場に運んだ。

 同店は無名塾の合宿時に弁当を提供するなどして塾生を支えてきた。店主の辻口利広さん(60)は「自分たちだけではとても終わらない。塾生が来てくれたのは本当に助かる」と感謝した。

 塾生は今後も定期的に中島で支援活動に当たることにしている。今秋に予定される市制20周年公演「肝っ玉おっ母と子供たち」では、仲代さんが主役として舞台復帰することを表明している。赤羽さんは「自分たちに今できることを精いっぱい頑張り、再び演劇で町を盛り上げたい」と意気込みを語った。

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