ゴディバジャパンのジェローム・シュシャン社長、福井の文化は「スペシャルで宝物」 北陸新幹線開業前の福井にエール

「ゴディバ ジャパン」のジェローム・シュシャン社長=1月30日、東京都港区

 高級チョコレートで知られる「ゴディバ ジャパン」(東京)のジェローム・シュシャン社長(62)。2021年から福井の魅力発信を担う県の「フクイブランド・グランシュバリエ」を務め、そば店とコラボし来店者にチョコをプレゼントするなど福井との関わりが深い。文化や伝統工芸、幸福度を「宝物」と捉える。北陸新幹線敦賀開業後は「(母国である)フランスの企業が出席する会議を福井で開きたい」と提案する。

 ―福井との出会いは。 「本で読んだ日本の禅の世界に魅せられ、永平寺に興味を持った。パリで大学生だった1983年に来日し、東京からヒッチハイクで福井に来た。曹洞宗天龍寺(永平寺町)の笹川浩仙(こうせん)住職と出会い、宿泊と座禅をさせてもらい、その後永平寺で修行した」

 ―禅の魅力は。外国人を呼び込めるか。 「欧米でも『自身の宗教とは違うことをやってみたい』と、禅に興味を持つ人は増えている。座禅など身体を使って自分自身を整えるのが魅力的。今は(完全菜食主義者の)ビーガンもブームで、精進料理もPRポイント」

 ―福井の魅力は。 「大自然や手作りのもの。福井で和紙や漆器、日本酒、豆腐づくりなどの現場を見たが、『○代目』という文化は世界的に見てスペシャルで宝物だ。伝統を次の世代に伝えることが少なくなった国も多く、世界にもっと発信してほしい」

 「親切心や礼節、穏やかな心、伝統…。福井の皆さんが引き継いでいるものはすごく価値がある。変化が激しい21世紀にどんどんなくなっている価値だ。新しいことよりも、福井らしさを知ってもらうことが大事」

 ―北陸新幹線延伸に合わせ、福井県はPRに力を入れている。 「私はフランス企業や日本の大手企業など600社以上が入会している在日フランス商工会議所の会頭を務めている。理事会は東京で開いているが、延伸後に福井で開催しましょうと提案した。秋頃に実現できたら。理事会には日仏の名だたる企業が入っている。『福井いいな』と口コミで広がったり、ビジネスでつながったりできればいい」

 ―ゴディバは「ハピネス(幸せ)をお客さまに届ける」という考えを重視している。福井県は幸福度が高いと言われている。 「幸せは人間が根源的に望むもの。幸せのために、お金や地位などを目指す人が多いが、手に入れたら幸せになるかというとそうではない。考え方のリセットが必要で、好きなことをやるとか、もっと根本的な心の部分が大事。福井の人たちは生き方が穏やかに見える。理由を探していくと面白いかもしれない。新幹線開業までは東京から行きづらく、福井の幸福度日本一は“隠れた宝物”だった。福井のハピネスは県外、国外の人々へ向け、特別なメッセージになる」

ジェローム・シュシャン 1961年フランス・パリ生まれ。「ラコステ」北アジアディレクター、LVMHグループ「ヘネシー」ディレクターなどを経て2010年から「ゴディバ ジャパン」社長。同年国際弓道連盟理事就任、13年に弓道の錬士5段を取得。在日フランス商工会議所会頭、在日ベルギー・ルクセンブルグ商工会議所理事を務める。 3月16日の北陸新幹線福井県内開業を契機とした新時代の福井のあり方を探る長期連載「シンフクイケン」は第7章に入りました。テーマは「福井へのエール」。食や2次交通、まちづくりなど各分野の関係者6人に開業への思いや期待を聞き、福井の発展の可能性を探ります。連載へのご意見やご感想を「ふくい特報班」LINEにお寄せください。

シンフクイケン・各章一覧

【第1章】福井の立ち位置

【第2章】変わるかも福井

【第3章】新幹線が来たまち

【第4章】駅を降りてから

【第5章】ハピラインにバトン

【第6章】福井が変わる

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