21美、6月下旬全館再開 800枚超のガラス天井撤去 開館20周年展は秋以降

6月下旬をめどに全館が再開される金沢21世紀美術館

 能登半島地震で被害を受け、無料ゾーンの一部だけを開放している金沢21世紀美術館の全館再開が6月下旬になることが17日、金沢市への取材で分かった。来館者の安全を確保するため、約70枚が落下するなどして損壊した天井の800枚を超えるガラス板すべてを撤去する。北陸新幹線敦賀延伸、5月の大型連休には間に合わないが、開館20周年を迎える金沢屈指の人気スポットは秋以降に記念展を計画しており、一日も早いにぎわい回復を目指す。

 21美では展覧会(有料)ゾーンで、天井のガラス板約70枚が落ちたり、ひび割れたり、ゆがんだりしたほか、シアター21の可動席のキャスターが壊れた。交流(無料)ゾーンでも、通路の天井パネルが多数ずれた。1月1日は休館日で、けが人はいなかった。

 同2日から臨時休館し、2月6日に1カ月ぶりに営業を再開した。市民ギャラリーA・Bやアートライブラリーなど、安全確認と作品の固定作業を終えた交流ゾーンの一部のみを開放。美術館主催の展覧会や人気作品「スイミング・プール」は見られない。

 21美の来館者は北陸新幹線開業以後、年間200万人を超えており、2018年度は過去最多の258万人、コロナで20年度に87万人と落ち込んだが、今年度は昨年12月末時点で223万人と回復した。

 設計者である妹島(せじま)和世、西沢立衛(りゅうえ)両氏の建築家ユニット「SANAA(サナア)」は、10年に「建築界のノーベル賞」と呼ばれる米プリツカー賞を受けた。

 金沢市は金沢観光で最も人気のある21美の早期の全館再開を最優先し、被害を受けたガラス板だけではなく、すべてのガラス板を取り外し、来館者の安全を確保することにした。

 ガラス板は1.5メートル四方の強化ガラスで重さ90キロ。高さ4~12メートルで、展示室14カ所と「長期インスタレーションルーム」に計800枚以上が使われている。

 市はすでに破損したガラス板約70枚を撤去した。4月から残りの730枚超を外し、安全点検をする。シアター21のキャスターも年度内に修理を完了させる。3月補正予算案に事業費9千万円を盛り込む。

 21美では新年度、開館20周年を記念し、自然環境や社会、精神と芸術の関わりをテーマにした特別展など二つの展覧会を開く。

  ●26年度以降に大規模修繕

 21美は地震被害とは別に経年劣化で設備の傷みが激しくなっている。市は中長期修繕計画に基づき、新年度から大規模修繕に向けた実施設計に取り組む。屋根や外壁、床、空調や給排水設備、照明器具などすべてが対象となる。

 20周年記念事業費と合わせて新年度当初予算案に1億4670万円を計上する。改修工事は26年度以降に長期休館して行われる。

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