異界の扉、あなたの横に… 阪急沿線の怪談40話出版 西宮北口駅や神戸三宮駅で怪異談 尼崎の作家・宇津呂さん

「怪談売買所」で客と話す怪談作家の宇津呂鹿太郎さん=尼崎市杭瀬本町1、杭瀬中市場

 西宮北口駅に現れたこの世ならざる男、神戸三宮駅近くのパチンコ店にある異界への扉…。阪急電鉄沿線にまつわる怪談を集めた「阪急沿線怪談」が話題を呼んでいる。著者の怪談作家・宇津呂鹿太郎さん(51)=兵庫県尼崎市=は「阪急沿線は街の色彩も多様でさまざまな人が住んでおり、そのぶん怪異のバリエーションも豊富だった」と語る。(池田大介)

 宇津呂さんは関西を中心に活動する怪談作家。怪談を1話100円で売買する「怪談売買所」を尼崎市杭瀬本町1の杭瀬中市場などに出している。これまでも「兵庫の怖い話」や児童書「怪談売買所」などの怪談本を手がけ、音声配信サービス「ポッドキャスト」では「100円で集めた怪談話」を配信している。

 今回は「ご当地怪談」を数多く手がける竹書房怪談文庫から出版。東京の「中央線怪談」に続く沿線モノで、神戸、大阪、京都の三都を結ぶ阪急沿線の怪談40話を収録している。

 兵庫県内が舞台の怪談も多く、その一つが西宮北口駅の利用者2人から聞いた「阪急西宮スタジアムの跡地にて」。同駅近くにあった同スタジアム跡地沿いを夜に通った際、歩いても歩いても同じ風景が続いたり、この世の人ならざる男につきまとわれたりしたという体験談を取り上げた。

 同スタジアムはかつてプロ野球・阪急ブレーブスの本拠地などとして使用されたが、2005年に取り壊された。08年、跡地に阪急西宮ガーデンズが開業して以降は同じような怪異が聞かれなくなったといい、「喧噪(けんそう)と静寂の落差が激しいと怪異を呼ぶと言われている。にぎやかだったスタジアムが閉鎖された後に怪異が起こったのは興味深い」と話す。他にも神戸市灘区の王子動物園、宝塚市の廃虚ホテルや阪神・淡路大震災にまつわる話も掲載している。

 宇津呂さんは「この本を手に阪急沿いを歩いてみてほしい。きっと身近に怪異の片りんが見つかるはず」と話している。A6判238ページで、税込み836円。一般の書店で購入できる。竹書房怪談文庫のメール(info@takeshobo.co.jp)

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