「被爆前の日常に着目」 長崎大レクナ デジタル化事業の成果報告

航空写真アーカイブや教材制作など、3年間の取り組みに関する成果報告会=長崎市、国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館

 長崎大核兵器廃絶研究センター(RECNA=レクナ)が2021年度から取り組んできた「『被爆の実相の伝承』のオンライン化・デジタル化事業」の成果報告会が18日、長崎市平野町の国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館であった。
 被爆体験を国内外、次世代に伝えることを目的に同祈念館から受託。23年度までの3カ年計画で取り組んできた。冒頭でレクナの林田光弘特任研究員が事業の概要を説明。「これまで資料が集められてこなかった」という長崎原爆前の日常に着目し写真を集めたほか、デジタル教材を制作するなどの内容を報告した。写真や教材はウェブサイト「被爆前の日常アーカイブ」で公開している。
 同サイト内では、原爆で壊滅する前後の長崎市街地の航空写真を閲覧できる「航空写真アーカイブ」も公開。現代の航空写真とも比較できるほか、全壊を免れた建物を3DCGで再現している。
 制作に携わった同大情報データ科学部の全炳徳(チョンビョンドク)教授は、米国立公文書館での航空写真調査の経緯などを紹介。「写真が伝えるメッセージは強く、前後の比較や広範囲に及ぶ被害の確認ができるという点で教材としては有効」と話した。今後は原爆投下直後に当たる8月10日の航空写真と、地上で撮影された写真を組み合わせたコンテンツも検討するという。
 報告会ではこのほか、教材制作に携わったフリーライターが登壇し、被爆者への取材の様子などを報告。教材を活用して市内小学生を対象に実施した平和学習などの取り組み紹介もあった。

© 株式会社長崎新聞社