【タイ】ソニー、タイで大容量HDD用レーザー生産[IT]

ソニーセミコンダクタソリューションズ(SSS、神奈川県厚木市)がタイで建設中の新棟で、米シーゲート・テクノロジーが開発した大容量ハードディスク駆動装置(HDD)向けに半導体レーザーを生産することが20日までに分かった。シーゲートが開発した大容量HDDは記録密度が高く、同じデータセンターの専有面積に対してストレージの容量が倍になるという。

ソニーセミコンダクタソリューションズの広報担当者はNNAの取材に対し、半導体レーザーについて「新棟で予定しているいくつかの生産品目のうちの1つ」とし、「レーザー光で熱した微小な領域だけにデータを記録する『熱アシスト磁気記録(HAMR)』技術を持つHDD向けになる」と説明した。タイで建設中の新棟については「来年度初めの生産開始ターゲットを前に、3月末に生産ラインの立ち上げを行うスケジュールで準備を進めている」と述べた。

■AIデータを保存

人工知能(AI)の普及に伴い、データの価値がかつてないほど上昇。データも大幅に増量している。データセンターの建設には莫大なコストがかかる中、HDDの容量を増やしていくには、磁気ディスクの枚数を増やすか、記録密度を向上させるかの2つの選択肢がある。

ディスクを追加する場合、データを読み書きするヘッド、データが保存されている銀色の円盤であるプラッターなどの電子部材が必要になり、コストがかかる上、二酸化炭素(CO2)の排出量も増える。一方、記録密度の向上も、磁気テープや磁気ディスクなど媒体表面の磁性体を磁化して信号を記録するという従来の方式では高密度化が限界に達していた。

シーゲートによると、HAMR技術を使うことで、クラウドストレージで使用されているHDDの平均的な記憶容量は3.5インチ1台あたり30テラ(テラは1兆)バイトと、従来の約2倍になる。さらに、1台の消費電力はあまり変わらないため、テラバイト当たりの消費電力が40%改善するという。

シーゲートはすでにハイパースケールクラウドの顧客向けに大容量HDDを出荷しており、3月には本格生産に入る計画だ。

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