本紙記者、南極へ・健康預かる医療隊員 寺崎さんと小田さん、2人で定期的に診断

南極観測隊員の健康を守る医療隊員の寺崎康展さん(右)と小田有哉さん=昭和基地

 【南極海=報道部・小田信博】南極・昭和基地では、事あるごとに観測隊員同士で「ご安全に」と声をかけ合う。医療体制に限りがあるため、病気やけがをしないことが何よりも大切となる。日々、隊員の体調に目を光らせ、健康を守っているのが、全国の医師から公募で選ばれた医療隊員だ。

 第65次隊に参加しているのは、寺崎康展(やすのぶ)さん(50)=福岡県久留米市、北海道大消化器外科1・市立稚内病院出身=と小田有哉さん(37)=茨城県龍ケ崎市、日本医科大千葉北総病院救命救急センター出身=の越冬隊員2人。

 寺崎さんは小学生の時に映画「南極物語」を見て南極に憧れを抱いた。10年ほど前に医療枠があることを知り、参加を考えるようになった。極地に適応するため、今まで以上に地域医療や救急医療の経験を積み、今回の応募に手を挙げた。

 小田さんも子どもの頃に観測隊の活動を知って参加を夢見た一人だ。「南極で活躍する研究者の支えになりたい」と志願し、2度目の応募で夢をつかんだ。救急医療の最前線で人命救助に奔走し、へき地診療にも携わってきた。

 昭和基地は手術室を備え、エックス線や胃カメラなどの設備も整っており、各国の基地の中でも屈指の医療水準にある。それでも国内と違って看護師や技師などはおらず、全て医療隊員で対応しなければならない。手に負えない病気やけがが発生しても、簡単に搬送はできない。

 寺崎さんも小田さんも「普段、いろんなスタッフに支えられていることを実感する」と口をそろえる。越冬期間中は定期的に健康診断を行い、病気やけがの予防に努める。

 寺崎さんは「何事もなく一年を過ごせるように、口うるさいかもしれないが、隊員に健康の大切さを伝えている」、小田さんは「隊員とその家族を含めて心身の健康を守れるようにケアをしていく」と話していた。

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