能登の鉄路、3代守りつなぐ かほくの寺島さん 祖父、父に続き七尾線運転士に

運転士の最終訓練に向け、父和彦さん(右)から激励を受ける圭亮さん(左)=JR七尾駅

  ●国家試験合格、来月デビュー

 祖父、父が握ってきた能登の鉄路のハンドルを受け継ぐ決意をした運転士がいる。国家試験に合格し、3月にデビューするJR西日本の寺島圭亮さん(26)=かほく市白尾。能登半島地震で3週間の運休を余儀なくされた七尾線が当面の仕事場だ。高校時代から通学で毎日のように乗った列車から見る景色は変わってしまったが、「能登に暮らす皆さんの生活の足を守り、復興を支えたい」と意気込んでいる。

 運転士の一家に育った寺島さん。祖父和雄さん(86)=宝達志水町子浦=は旧国鉄で約30年間ハンドルを握り、石川県内では金沢から旧能登線の珠洲・蛸島までを走った。その背中を追うように父和彦さん(60)も特急「雷鳥」「はくたか」などの運転席に座る鉄道マンになり、現在は七尾線の車両を運転している。

 もともと鉄道に興味がなかったという圭亮さんだが、星稜高校に通っていたため、七尾線が通学列車。次第に運転士への憧れを抱くようになり、祖父、父に続き、高校卒業後にJR西に入った。

 金沢駅で「みどりの窓口」や改札を担当し、福井県内では車掌の経験も積んだ。昨年8月から和彦さんと同じ七尾駅勤務となり、先輩に操縦方法を学びながら今年1月の国家試験合格を目指していた。

  ●ホームで揺れに

 大きな揺れが襲った元日夕、圭亮さんは駅のホームにいた。ちょうど普通列車が入ってきたところだった。逃げ惑う乗客をどうにか誘導したが、見慣れた景色は一変した。ホームには亀裂が入り、レールは地面が隆起して波打っていた。七尾線は運休を余儀なくされ、国家試験も延期された。「今後どうなるか不安で仕方なかった」と振り返る。

 それでも、七尾線は1月15日に高松―羽咋間、同22日に羽咋―七尾間の運転が再開され、2月に入ると和倉温泉まで鉄路が戻った。「お客さんの笑顔をまた見ることができてうれしかった」と圭亮さん。運転士の国家試験も2月5、6日に実施され、合格をつかむことができた。

 23日から始まる最終訓練の試験官は、ベテランの指導操縦者でもある和彦さんだ。圭亮さんは「早く一人前の運転士になりたい」と意気込み、和彦さんは「親子だからこそ、より厳しく指導したい。努力を重ねてほしい」とエールを送った。

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