なぜ「PTA」上部組織からの「退会」を決断したのか? 保護者の負担増加で"本末転倒"の声「PTA活動で子どもと接する時間がなくなっていく…」 全国で加速する組織退会

子どもたちの健やかな成長のために、小学校の保護者や教員などで構成される任意団体「PTA」。小学校単位や県単位などで構成される連合会や協議会が存在しますが、学校単位のPTAが上部組織から退会する動きが進んでいます。
来年度から退会を決めた小学校PTAに話を聞くと、負担となっているPTA業務の存在が見えてきました。

大山小学校 PTA会長 赤松雄一郎 さん
「子どもと接する時間。土曜日や日曜日に子供たちと接したいけれども、PTAの活動で接する時間がなくなっていく。これはもう、本末転倒なのかなって私は思いますよ、正直」

このように話すのは、鳥取県西伯郡大山町の大山小学校でPTA会長を務める赤松さん。

2024年度から、西伯郡では初めて、郡の小学校単位のPTAで構成される「西伯郡小学校PTA連合会」から退会することを決めました。

そもそもPTAとは、各小学校の保護者や教員などで構成されていて、子どもたちの健やかな成長のために、学校だけでなく家庭や社会が教育の責任を分けあい、力を合わせて子どもたちの幸せのために努力していくことが目的とされています。

各小学校の単位PTAは、基本的に、その学校がある郡や市などのPTA組織に所属しており、さらにそのPTA組織は、各都道府県の協議会または連合会に所属。

そして、日本PTA全国協議会に所属している形となります。

大山小学校のPTAは、西伯郡のPTA連合会からの退会を決めたため、必然的に県のPTA協議会からも退会することになります。

なぜ、退会を決めたのでしょうか?

大山小学校 PTA会長 赤松雄一郎 さん
「メインとなるのが各会員のですね、負担軽減が一番大きいです」

PTA会員の負担軽減です。

郡のPTA連合会に所属していることによって、年に何度か開催されるPTA連合会や鳥取県PTA協議会の研修会への参加が求められるとのこと。

そのための資料作りに費やす時間も膨大で、PTA役員の負担になっているといいます。

大山小学校 PTA会長 赤松雄一郎 さん
「(連合会や協議会の)各研修会ですとか、状況によっては、各学校の魅力PR的な、そういった講習会、講演会なども開いていかないといけないです。そうなってくると、そのための資料作りなどが、各学校の役員さんの相当な負担になっているところです」

2002年度、大山小学校のPTAは、83の家庭で構成されていましたが、少子化などの影響で、2023年度までに56の家庭に減少。2024年度には、さらに減少し、51家庭となる予定です。

1人あたりのPTA会員の負担が増えていく中、PTA会長の赤松さんは、単位PTA自体の崩壊を防ぐために、今のPTA業務の中で削減できるものを模索。

その1つが、PTA連合会からの退会だったということです。

大山小学校 PTA会長 赤松雄一郎 さん
「根本的に今のPTA活動っていうのは、昔からの歴史があって、その時代で『これいいね、あれいいね』で、いろんなものが肉付けされて、どんどんどんどん膨れ上がって、この膨れ上がったものを全てやると確かにいいんですよ。だけど、その当時の20年~30年前の保護者の数と今というのも全く違いますから、当時思い描いた『いいね』を今やろうとすると、非常に大変です」

全国的にこうした動きは加速しています。

日本PTA全国協議会によりますと、2020年度からの3年間で、全国で約800の学校が日本PTA全国協議会から退会しているということです。

大山小学校 PTA会長 赤松雄一郎 さん
「何もかも削減削減って言ってはおりますけども、これはネガティブな削減ではなくて、少しずつ少しずつ小さくしていって。小さくなったら、今度は今何が本当は必要なのかを今度また足し算していって、見直すタイミングだと私は思っております」

鳥取県PTA協議会は、協議会や連合会などに所属していることによって、行政とのやり取りがスムーズになるという利点があると話しますが、今回の退会の動きは尊重したいとしています。

鳥取県PTA協議会 髙尾裕子 会長
「やはり本来あるべき姿は、保護者と先生が子どもたちのために、私達ができることって何だろうかっていうことを話し合うことです。そこがPTAの根本にあると思っておりますので、その中で業務をスリム化するというのであれば、そこは尊重したいと思っております」

鳥取県PTA協議会によりますと、2024年度、大山小学校と名和小学校の2校のPTAが、西伯郡小学校PTA連合会から退会するとのこと。

「子どもたちの健やかな成長のため」という軸がブレることなく、今後も続けられるようなPTAのあり方が求められています。

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