湘南の新システム4-4-2、選手・監督の手応えは? キム・ミンテは「面白いチームになる」田中聡は「僕のところは自由になった」

[J1第1節]湘南ベルマーレ 1-2 川崎フロンターレ/2月24日/レモンガススタジアム平塚

2月24日、湘南ベルマーレはJ1開幕節で川崎フロンターレとホームで対戦し、1-2で敗れた。

驚きだったのは、湘南のシステムだ。昨季までの3-5-2ではなく、4-4-2でスタート。キム・ミンテと大岩一貴がCBコンビを組み、SBは右が鈴木雄斗、左が杉岡大暉、ダブルボランチは田中聡と茨田陽生、サイドハーフは右が池田昌生、左が平岡大陽、ルキアンと鈴木章斗が2トップに入った。

山口智監督は試合後、新システムの狙いを次のように語った。

「多くは言えませんが、これまでは従来の3バックで戦い、反省のあるシーズンを過ごしました。形を変えて、守備で我慢をする時間帯と、自ら奪いに行く時間帯の使い分けをより明確にして、安定感を加えたかった。また、主に攻撃面でダブルボランチを並べられるメリットもあります。(田中)聡やバラ(茨田)の良さはさらに出やすいのかなというイメージです」

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指揮官が明かした狙いの通り、昨季と比べてブロックを敷いた際の安定感は増していたように見えた。2トップが相手のアンカーへのパスコースを消す立ち位置を取り、サイドに追い込むかロングボールを蹴らせてボールを奪取。

押し込まれても、最終ラインと中盤がコンパクトに中央を固める。4-4-2をキャンプから継続して取り組んできたというだけあって、全体的な完成度はまずまずだった。

一方、局面ごとの細かな判断や立ち位置には修正の余地があると言える。1失点目はカウンターを受けた際、守備陣だけでなく中盤の選手までボックス内に帰陣したことで手前のスペースが空き、川崎MF脇坂泰斗にフリーでミドルシュートを打たせてしまった。

また、2失点目も、GK富居大樹がパスを受けた時に大岩や田中、茨田らが素早くサポートしてパスコースを作れていれば、相手FWエリソンのプレスを回避できたはずだ。

4-4-2の魅力のひとつは、バランスの良さだ。選手の配置が均一なため、個々が見るべきスペースやマークすべき相手が分かりやすい。ただ、今節の失点シーンのように自らバランスを崩してしまうと、簡単にギャップを突かれてしまう。

均衡の保たれた守備を長い時間、維持しても、一瞬の乱れが命取りに――。川崎戦の失点シーンは、まさにそういった形だった。

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攻撃面にも課題はある。ビルドアップの安定感は発展途上で、敵陣深くまで侵入する確率も低い。カウンターでファイナルサードまで踏み込んでも、チャンスにつながらないプレーが続いた結果、2トップのルキアンと鈴木章はシュート0本で試合を終えた。

守備は及第点。攻撃はまだこれから。そんな印象の新システムでの初陣について、各選手や指揮官はどう捉えたのか。それぞれの答えはこうだ。

「連動して奪いに行く、ミスを誘うシーンは、準備の通りに出してくれました。攻撃面でも、ボールを奪ってゴールに近づく場面はあった。ただ、勝つためにはあと一歩、決めるためのアイデアが必要だと感じました」(山口監督)

「今日の試合でやりづらさを感じることはなく、僕はキャンプの時から、この形の方が良いと思ってやってきました。ただ、選手個々の判断で押し負けた部分はあると思うので、経験を重ねてそこが改善すれば、もっと面白いチームになると思います」(キム・ミンテ)

「システムが変わってどうか、というのは、僕はあまり意識していません。11対11でやるスポーツで、そこに変わりはないです。智さんが求めていることをチームでやる。システムに関わらず、根本は昨季と変わりません」(池田)

「4-4-2で、特に守備のところはキャンプから上手くやれています。まだ始めたばかりですが、良い形でできている手応えはあります。あとは、昨季までの3バックと併用して、相手によって変えられるようにできれば、さらに面白いのかなと」(鈴木雄)

「ダブルボランチになったことで、僕のところは自由になったというか、アンカーよりは動きやすくなりました。前に絡める回数も増えたので、個人的にはやりやすいです」(田中)

山口監督やキム・ミンテが語ったキャンプ中に掴んだ手応えと、公式戦だからこそ見えた課題。池田の言う、システム以前の原理原則の重要性。各々、今節の川崎戦で確かな収穫を得たようだった。

いずれにせよ、2024年シーズン、そして4-4-2での戦いはまだ始まったばかり。山口監督のもとで修正を施し、選手同士ですり合わせて完成度を高められれば、3バックで戦った昨季以前よりも安定した戦いぶりが見込めるはずだ。

川崎戦の敗戦を糧とし、次戦で一定の成果を見せたい。注目の2節・京都サンガF.C.戦は3月2日、14時からサンガスタジアム by KYOCERAで開催される。

取材・文●岩澤凪冴(サッカーダイジェスト編集部)

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