イベント、SNS、バー併設 青森県内書店 生き残り模索 来店客減、売り上げ厳しく

昨年12月から本と文具を同じフロアで扱っている青森市の成田本店しんまち店=1月

 青森県内の書店がここ数年、次々と姿を消している。昨年末には八戸市の老舗店・木村書店が96年の歴史に幕を下ろし、今年4月には大型書店であるジュンク堂書店弘前中三店の閉店が決まっている。書籍のオンライン販売が進み、実店舗売り上げが落ち込んでいるのが主な理由。全国的に書店数が減る中、県内では生き残りを懸けて工夫を凝らす店も。サイン会などのイベント開催、カフェやバーの併設など、本好きが集う場をつくりながらさまざまな挑戦を続けている。

 日本出版インフラセンターによると今年1月時点での全国書店数は、10年前の2014年度と比べて3629店減の1万1036店。青森県は昨年末時点の書店数が156店で、10年前と比較すると52店減少している。

 県書店商業組合理事長で青森市の成田本店会長・成田耕造さん(70)は「県内で現在、書店が一つもない市町村は15。今後も増え続けるのでは」と懸念する。成田本店は同市に本社を置く老舗店だが、年々客数が減少。しんまち店では昨年12月から、1~3階まであった販売フロアを1、2階に集約し仕事の効率化を図っている。

 成田さんは「厳しい状況が続いているが、展覧会やサイン会は街の本屋として残したいイベント。書店にもう一度足を運んでもらい、街ににぎわいをつくれたらと思う」と話す。

 「来店客数は低調が続いている。お店の規模に関わらず、書籍だけの販売で経営を維持するのは大変」と胸の内を明かすのは、まわりみち文庫(弘前市)店主の奈良匠さん(43)。個人書店としてオープンし今年で4年目を迎える。

 売り上げを伸ばすべく同店では、本の魅力発信に力を入れる。地元在住の作家やライターによるトークショーなどを月1、2回開催。交流サイト(SNS)では自身の感想を交えて本の紹介をしている。奈良さんは「話題になる投稿というより、読書好きの人たちに向けて細く長く本の良さを発信していくイメージ。弊店のような小さい書店の場合は特に、この意識が必要だと感じる」と話す。

 八戸市のブックバーAND BOOKS店主の本村春介さん(49)は、県内書店の減少について「とても残念なことだが、想定の範囲内でもある」と答える。同店は18年に開店。地方では書籍販売だけだと経営が厳しいと考え、バーを併設した。売り上げは「オープンから微増をキープ」している。

 昨年からは、話題づくりとしてノベルティグッズの販売を始めた。今夏には古本販売をメインとした新店の開設を目指す。「映画館がなくなるなど文化に触れる機会が少なくなっている八戸。だからこそ、いろんな人がまだ見ぬ本と出合える場所をつくりたい」と本村さんは意気込む。

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