【ミャンマー】人民兵役法施行の影響を分析=シンクタンク[政治]

シンクタンクのISPミャンマーはこのほど、国軍による「人民兵役法」(通称「徴兵法」)の施行とその影響に関する分析結果をまとめた。

ISPは徴兵制の導入について、◇国軍が人民兵役法を施行する必要があった理由◇具体的な施行手順◇同法がもたらす悪影響——の3点から分析した。

1点目については、国軍に対する国民の支持低下を背景に従来の徴兵方法が非効率的になっていることが主な理由と分析した。ミャンマーでは、2021年2月のクーデター前に16万人だった兵士数が約10万人まで減少している。国軍は徴兵制を通じて4月から毎月5,000人、年間で6万人を徴兵し、1年以内にクーデター前の水準に戻す考えを持っているという。

2点目についてISPは、人民兵役法の施行に時間がかかるとの考えを示した。国民の徴兵に向けた中央組織の設置は済んだものの、地域・州レベルの組織は未設置で、手続きの詳細が発表されていないと指摘。適格な市民の特定、訓練や新兵を監督する新たな部署の設置などに時間がかかると説明した。

また、国軍は4月のティンジャン(ミャンマー正月)明けに徴兵を開始するとしているが、適格市民の特定後、召集令状の発送、健康診断に2カ月程度かかり、第1陣の訓練開始は早くても6月になると予測。訓練期間を4~5カ月と想定した場合、第1陣が訓練を終えるのは11月~来年1月になるとの見方を示した。

3点目については、人権侵害の拡大、汚職や恐喝の増加、海外への移住者の増加に加え、人種や宗教、州・地域間の緊張が高まると予測。徴兵は、少数民族武装勢力が存在しない地域の農村部で暮らす貧困層のビルマ族や少数民族の若者を対象としているためだと説明した。紛争地域の若者が少数民族武装勢力や国民防衛隊(PDF)に加わる可能性もあるとした。

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