福島県内59市町村防災アンケート㊦ 個別避難計画一部策定48市町村 支援者確保課題 高齢、関係希薄化など要因

 能登半島地震を受け、福島民報社が福島県内59市町村に実施した防災アンケートで、災害時に一人では避難できない高齢者や障害者らの「個別避難計画」の策定が48市町村で一部対象者にとどまっていることが分かった。このうち約半数の22市町村が対象者を手助けする支援者の確保が困難とし、住民の関係希薄化や対象者の周囲にいる人も高齢者が多いなどの理由を挙げている。計画を作る担当職員が不足しているとの指摘もあり、対象者全員分を策定できたのは7町村のみだった。計画がなければ、計画的な避難に支障が出る恐れがあり、対象者に寄り添う支援者の確保が課題となっている。

 能登半島地震による石川県の死者は災害関連死15人を含む241人(22日午後2時現在)で、65歳以上の高齢者が多い。102人が犠牲となった輪島市防災対策課の担当者は「計画策定が進んでおらず、(対象者の)避難誘導に課題を残した」とする。

 県内市町村の計画策定状況は【表】の通り。一部策定済みとした48市町村が最も大きい課題とするのは【グラフ】の通り。東日本大震災の津波などによる直接死者数が県内最多の南相馬市は対象228人のうち125人分を策定した。担当者は「民生委員らの協力を得ながら対応を進めているが、若い世代の支援者の確保が難しい」と実態を語る。

 いわき市は対象1万4149人のうち策定したのは205人分。担当者は「近所付き合いが少なくなり、支援者を見つけにくい」とする。郡山市の担当者は「支援者としての責任を重く感じる人も多い」と確保が進まない理由を語る。対象1万5699人のうち策定できたのは1人分だけだ。

 策定が進まない背景には市町村の担当職員の不足もあり、16市町村が課題と答えた。

 策定済みの7町村のうち、南会津町は危機管理部門と保健福祉部門の部署が情報共有し、全対象者663人分を策定した。担当者は「地域のことをよく知っている行政区長に旗振り役をお願いすることで策定できた」とした。

 県は計画策定のため、住民や自主防災組織、民生委員・児童委員、介護保険事業者、障害福祉サービス事業者、ボランティアらの協力を得るよう県地域防災計画に定めている。

■個別避難計画の策定状況

▼対象者全員分を策定済み=7町村

大玉、天栄、檜枝岐、只見、南会津、会津坂下、新地

▼対象者の一部を策定済み=48市町村

福島、会津若松、郡山、いわき、白河、須賀川、相馬、田村、南相馬、伊達、本宮、桑折、国見、川俣、鏡石、下郷、北塩原、西会津、磐梯、猪苗代、湯川、柳津、三島、金山、昭和、会津美里、西郷、泉崎、矢吹、棚倉、矢祭、塙、鮫川、石川、平田、浅川、古殿、三春、小野、広野、楢葉、富岡、川内、大熊、双葉、浪江、葛尾、飯舘

▼その他=4市村

喜多方、二本松、中島、玉川

※個別避難計画 避難時に助けが必要な人ごとに市町村が策定する。氏名や住所などに加え、支援者や避難経路などを盛り込む。2021(令和3)年5月施行の改正災害対策基本法で、自治体の努力義務となった。政府は同年の指針で「おおむね5年程度で作成に取り組む」との目標を掲げ、全自治体に着実な取り組みを求めている。

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