●生まれ育った家… それでも「迷惑掛けられん」
珠洲市は26日、能登半島地震で倒壊は免れたものの、隣家に倒れる「2次被害」の恐れがある建物を対象に、緊急の公費解体を開始した。市中心部の飯田町の家屋では、業者が次々と中に入り、家具や貴重品をトラックに運び出し、重機による解体の準備を進めた。家主は作業を見守り「隣に迷惑は掛けられん。市が早く動いてくれて助かった」と胸をなで下ろした。
珠洲市によると、余震が続く中、道路をふさいだり、隣の住宅や歩行者、車に被害を及ぼしたりする恐れがある建物は市内で50棟以上が確認されており、順次、緊急解体する。
自治体が所有者に代わって被災建物を解体・撤去する公費解体は、罹災(りさい)証明書で「全壊」「半壊」などの認定と現地調査が必要で、所有者の同意を得た上での実施となる。
市は13日に仮申し込みの受け付けを始め、25日時点で716件の申し込みがあり、危険性のある建物を緊急措置として解体することにした。
道路側に傾き、いつ崩れるか分からない木造2階建て自宅の解体を市に申し出た佐藤寿美雄(すみお)さん(72)は「早急な対応には感謝しているが、生まれ育った家を壊すと思うとすごくつらい。最後までここに住み続けたかった」と悲痛な表情を見せた。