「状況が好転する保証はどこにもない」選手も首を傾げたシャビ電撃退任発表の舞台裏「最も指揮官に批判的だったレバンドフスキでさえ...」【現地発】

シャビはようやく微笑んだ。疑念の渦に閉じ込められ、ピッチ上の問題を解決することも、フロントのバックアップを得ることもできなかった数か月間を経て、バルセロナのベンチで過ごす期限を決めた。バルサとバルセロニスモを取り巻く内外の重圧から解放されるための作戦だった。1か月ほど前からすでに心は決まっていた。

「何が起ころうとも、今シーズン終了後にバルサを去る」と側近に決意を語っていた。スーペルコパ・デ・エスパーニャ決勝でレアル・マドリーに1-4で敗れた後、代理人のフェルナンド・ソラナスは、シャビの自宅に出向き、作戦を練った。「問題はいつ公表するかだった」とその話し合いに参加した関係者の1人は言う。ビジャレアル戦はまだそのタイミングではなかったはずだった。しかし3-5という無残な敗北が事態を加速させた。

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ビジャレアル戦が終わったとき、クラブの幹部はコーチングスタッフの間で起こっていた奇妙な動きに気づいた。シャビは、タイミングが来たと悟った。しかし、その前にジョアン・ラポルタ会長に報告しなければならなかった。シャビはラポルタの右腕、アレハンドロ・エチェベリアに電話をかけ、「会長と一緒に降りて来てほしい。話したいことがある」と告げた。モンジュイックの貴賓席にいたラポルタと側近が辞任の可能性を察知した瞬間だった。

シャビとの面会場所に向かう途中、スポーツ部門のスタッフの1人が「カッとなった感情のままで決断を下すべきではない」とシャビにメッセージを送った。

シャビがアシスタントコーチを務める兄と一緒にその指定された場所で待っていた。ラポルタ、エチェベリア、デコ(スポーツディレクター)、ラファ・ジュステ(スポーツ部門副会長)の面前で、シャビは退任の意思を明らかにした。試合中、貴賓席で怒りを堪えるのに必死だったラポルタは、思いとどまるように説得した。

「シャビは自分が用意した台本から動こうとしなかった」。その場にいた関係者の1人は明かす。記者会見場に向かう前、シャビはラポルタに、契約最終年を迎える来シーズンのサラリーを受け取る考えがないことを伝えた。シャビの側近は強調する。

「彼のバルセロニスモの表れだ。バルサの監督に就任するためにアル・サッドの契約解除金を自腹で支払ったことも忘れてはならない」

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選手たちが退任の報を聞いたのは、メディアを通してだった。ある者は自宅で、またある者は車の中で報道に接し、キャプテンの1人は「すでに想像していた」と語る。シャビが選手たちと対面したその翌日、予想外のことが起こった。

采配を巡り、いつもは支持派(ロナウド・アラウホ、ガビ、ペドリ、フェラン・トーレス)と、懐疑派(フレンキー・デ・ヨング、ロベルト・レバンドフスキ、イルカイ・ギュンドアン、アンドレアス・クリステンセン)に分かれていたドレッシングルームが、指揮官の下で一致団結を誓ったのだ。第1キャプテンのセルジ・ロベルトが音頭を取り、最も批判的だったレバンドフスキでさえ、シャビに好意的な姿勢を見せた。

とはいえ、問題はやはり公表のタイミングだ。シャビは、自らの判断が正しかったと確信しているが、選手の1人は、「これまでうまくいかなかったのに、これから状況が好転する保証はどこにもない」と首をかしげる。さらにその選手たちよりも割を食うかもしれないのはフロントで、事実、ラポルタ会長の側近は、今回の公表で恩恵を受けるのはシャビだけで、その分、自分たちに降りかかる重圧は高まるのではないかと懸念する。

「他では称賛されることが、ここでは殺される。我々の仕事ぶりが評価されない。(ラ・リーガとスーペルコパ・デ・エスパーニャを制覇した)昨シーズンは奇跡だった。にもかかわらず、今シーズン、結果に対する重圧が高まった。バルサの監督をするのは残酷だ」とシャビは訴える。

一方、ラポルタは、「昨シーズンより戦力の底上げが図られた分、期待値は高まっていた。でもチームはその期待に応えることができていない」と語っており、シャビとは意見を異にしている。そんな中、幹部の1人は自問自答する。「シャビはバルサ一筋で現役生活を全うした。それが今さらここの重圧の大きさに驚くなんてね」

くしくも「注意しろ。このままでは1人ぼっちになってしまうぞ」と前SDのジョルディ・クライフが昨年6月に退団する前にシャビに向けて発した警告が現実のものになっている。経営陣からもスポーツ部門からも後ろ盾を得られなかったシャビは、チームを動かす羅針盤も失った。そして、カタルシスを起こすには、当初の予定よりも早くアディオスを告げることだと理解した。

一方、「シャビから今シーズンいっぱいチームにとどまりたいと言われた。受け入れたのはシャビだからだ」と語るラポルタはその提案にゴーサインを出すしかなかった。今、重圧はフロントに降りかかっている。そしてシャビはようやく微笑んだ。

文●ファン・I・イリゴジェン(エル・パイス紙バルセロナ番)
翻訳●下村正幸

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