「欧州で一番、効率が悪い」シャビが嘆いた“決定力不足”はチーム全体の問題。そうなる理由がある【コラム】

「最後の精度」「決定力」「仕留めるところ」

言い回しはたくさんがあるが、それはゴールに迫りながらもネットを揺らせていない状況を表している。

サッカーというスポーツは単純明快で、11人対11人が戦って、どちらが点数を多くとれるか、で成り立っている。ゴールこそが真理と言える。言い換えれば、そこに辿り着くのが、そもそも一番難しいのだ。

例えば、昨年12月16日、FCバルセロナは敵地メスタージャでバレンシアと戦い、何度もゴールに迫りながらラストプレーの精度を欠き、1-1と引き分けている。

「チームはとてもいいフットボールをした。試合をコントロールしていたし、多くのチャンスを作った。ただ、勝利に十分なはずの機会を逃してしまったのも事実だ」

試合後、シャビ監督は語っている。そこには苦悩が滲み出ている。チームの仕組みを作って、戦いを展開させ、チャンスを作っても、ゴールを取れるかどうかは個人の技術がモノを言うだけに…。

「欧州で一番、効率が悪いチームの一つだろう」

シャビはそう言って嘆いた。

しかし勝敗の機微は、まさにそこにあるのだ。

バルサの決定力不足は明らかで、個人のスキルが多分に影響していたのは間違いない。
例えばロベルト・レバンドフスキはかつてのゴールマシンぶりは影を潜めているし、イルカイ・ギュンドアンもこの日はゴールのところで物足りず、ラフィーニャもアシストはあったが、何回も得点機を逃していた。「もう少しコントロールが、もう少しキックが」という場面は多かった。単純な個人の責任とも言える。

しかし、そうなっているだけの理由はあるだろう。惜しくもシュートを外し、一方で簡単に相手にはゴールを決められ、黒星を重ねる。それによって、選手が自信を失い、技術にも乱れが出る。言わば、メンタルの問題だ。

突き詰めると、ディフェンスの脆弱さも関係しているのかもしれない。試合の序盤や終盤で集中力の欠如や味方をカバーする意識の低さから生まれる失点が今シーズンは目立つ。守備面の懸念が攻撃にも焦りを与えている。さらに言えば、どうにか有力選手の力でゴール前には運んでいるが、最後でひずみが出ているだけとも言える。

シャビ監督がいくら、“チームとしてはうまくいっている”と取り繕っても厳しいだろう。どこかに亀裂があって、うまく機能していない証左と言える。今年1月、スペインスーパー杯で宿敵レアル・マドリードに1-4で完敗した試合は、象徴的だった。

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「決定力不足」

それは一面的な責任探しで、チーム全体の問題にも置き換えられる。ゴールはあらゆるプレーが辿り着く先だけに、そこに問題を抱えているというのは深刻なのだ。

文●小宮良之

【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。

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