「♯確定申告ボイコット」

 〈私たちの生活は、多くの公共のサービスを受けて成り立っています。これらの公共のサービスを受ける費用は税金でまかなわれています。…税は私たちが社会で生活していくためのいわば「会費」といえるでしょう〉▲中学生向けの社会科の教材「私たちの生活と税」から引いた。一方、手元の辞書の「租税」の項は〈国家や地方公共団体が経費にあてるために国民から強制的にとるお金〉▲辞書の記述に編集者の冷たい怒りや諦めを読み取るのは考えすぎだろうか。ただ、いずれにせよ、納税者が自分の所得と税額を計算して納める申告納税制度を支えるのが国民の理解であることは間違いないだろう。その理解が揺らいでいる▲〈♯確定申告ボイコット〉と目印を付けて訴える投稿がSNSで広がっている。事の起こりはもちろん〈国会議員の裏金は所得ではないのか、課税対象ではないのか〉というシンプルな疑問と憤りだ。昨日の国会でも野党議員が首相に詰め寄るひと幕があった。答弁は相変わらず歯切れが悪い▲本社の1階と2階が今、長崎税務署の確定申告会場になっている。長い列で自分の番を待ちながら似たような思いを抱く人もきっとゼロではないはず▲手元のパソコンが「しんこく」を何度も「深刻」と変換する。現状を言い当ててはいる。(智)

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