「家族や自分のそばにいる人々が最終的に残るのだから」自己最高3位をマークしたシナーが語るツアーで勝ち続けるよりも大切なこと<SMASH>

男子テニス世界ランク3位のヤニック・シナー(イタリア)が母国のスポーツメディア『Sport Mediaset』のインタビューに登場。その中でプレッシャーとの向き合い方や今後の目標について語った。

昨年後半から好調を維持し、先月の全豪オープン(オーストラリア・メルボルン)では悲願の四大大会初優勝を飾った22歳のシナー。全豪以来の公式戦出場となった先々週の「ABNアムロ・オープン」(オランダ・ロッテルダム/ATP500)でも優勝を手にし、大会後に更新された世界ランキングではキャリアハイの3位に浮上した。

最近はメディア対応の機会も増え、周囲からのプレッシャーも徐々に大きくなってきているというシナーだが、特に自身のこれまでのスタンスを変えるつもりはないと断言する。常に冷静沈着な22歳の若獅子は重圧にさらされることにも慣れていると強調し、こう続けた。

「プレッシャーに対処することもゲームの一部だ。今の僕はコート上でうまくやれているし、それ(重圧に耐え続けること)は良いことでもある。でも僕が収めた成功が人としての自分に変化をもたらしたとは思わない。それが重要なことだ」

さらにシナーは勝ち続けることよりももっと大事なものが他にもあるという考えが自身のメンタルコントロールにもつながっていると語る。「勝利というのは、かなり短い期間で経験するポジティブな瞬間だ。僕は(いつでも)その勝利の感覚を取り戻せることを夢見ているが、その一方でコート外でのことの方がどれだけ重要なのかを理解している。自分の家族や自分のそばにいる人々がどうしているか? とかね。最終的にはそういったものが自分に残るのだから」
ここまで大きなケガもなくツアーを転戦してきたシナーは今季の目標に「クレーシーズンと芝シーズンで結果を出すこと」を挙げている。前者についてはとりわけ5月に母国の首都ローマで開催される「イタリア国際」(5月8日~19日)で同郷のレジェンド、アドリアーノ・パナッタ氏(73歳/元4位)以来48年ぶりとなる優勝に向け、良いプレーを見せたいとコメント。後者についてはサーフェスに適応する難しさを語りつつ、結果を出せるよう努力していきたいと明かした。

「昨年のローマではスタートは良かったものの、良い試合ができなかった(ベスト16で敗退)。今年はレベルを上げたい。(自国の)貴重な大会だし、あれほど多くのファンの前でプレーできるのは美しいことだ。コートに入っても美しい歓声が聞こえ、まるで5万人の人々が詰めかけているかのように思えるほどだ」

「芝の大会に関しては僕が好む挑戦であり、少し(いつもとは)違うサーフェスを知る機会になる。芝では時折ボールがひどく跳ねたり、滑ったりもするが、お気に入りのサーフェスにしなければならない」

常に真摯かつ謙虚な姿勢でテニスに取り組んでいるシナーならその目標も達成できるはずだ。今後のさらなる活躍を期待したい。

文●中村光佑

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