「よくシュート練習したのを覚えている」中村俊輔の“戦友”岡崎慎司への想い「代表で一緒にやっていて、すごく助かった」

「貪欲で、サッカーが好きで、探求心が凄い」

今季限りでの現役引退を表明した岡崎慎司(シント=トロイデン)について、中村俊輔(横浜FCコーチ)に訊けば、そう答えた。

「持っている能力以上のものを出せる。努力と元々のセンスで、あそこまでの選手になったと思う。フォワードの資質がありながら、自己犠牲の精神もある。気持ちの入ったプレーヤーで、闘魂というか、あのダイビングヘッドもそうだけど、大和魂みたいなのがある」

2005年に清水エスパルスでプロキャリアをスタートさせた岡崎は、11年にドイツへ渡り、シュツットガルト、マインツでプレー。その後はイングランドのレスターに移籍し、プレミア制覇を経験。19年夏にスペインに新天地を求めてウエスカ、カルタヘナを渡り歩く。22年夏からベルギーのシント=トロイデンに籍を置く。

日本代表でも長く活躍した。ワールドカップには3大会連続で出場し、119試合で日の丸を背負い、歴代3位の50得点をマーク。日本を代表するストライカーとして、所属した各クラブでも多くのゴールを決めてきた。

日本代表で岡崎と共闘した俊輔は、「点をたくさん取る人って、頭がすごく良い」と持論を述べる。

「味方の良さを理解して、ボールのつなぎの前の前を予測できるから、最後にゴールできる。逆算して動ける。すごく賢いと思う」

岡崎もそういうFWだと評し、「そのうえで自分の身を削ってプレーできる選手。どの監督からも必要とされるだろうし、チームの士気を上げてくれる。代表で一緒にやっていて、すごく助かった」と感謝する。

岡崎が初めてワールドカップに出場したのは、2010年の南アフリカ大会。俊輔もメンバーに名を連ねたが、少なからずお互いに悔しい思いをした。

アジア最終予選までは不動の主力だったが、大会直前の戦術変更などによりスタメンから外れた。

「控え組で、一緒に練習するんだよね。岡ちゃん、森本とかもいて、何人かとよくシュート練習したのを覚えている」

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ふてくされても不思議ではない。だが、決してそうはならなかった。「一緒にもがける仲間がいたのは大きかった」からだ。俊輔の気持ちを受け止めてくれた川口能活や楢崎正剛にも助けられた。

俊輔が南アフリカ大会でピッチに立てたのは、グループステージ第2戦のオランダ戦のみ。しかも途中出場だった。それでも得難い経験として、その後の発奮材料にもなった。

「出場時間が短くて、良いプレーもできなかったかもしれないけど、大きくサッカー人生として考えれば、大事な時間だったと思う。俺は3年後にJリーグのMVPになって、現役も長く続けられた。

うまくいっていない時こそ、ひとりではやっぱり難しい部分もある。でも、仲間というか、同じ境遇の人たちと気持ちが折れずにできたのは大きかった。それは学んだこと」

その中に岡崎もいた。年下だが、いわば“戦友”でもある。南アフリカ大会後、岡崎は海を渡り、さらなる飛躍を遂げる。「プレミアで優勝なんて凄いよ」と感心する俊輔は、「あの時、岡ちゃんの中でもまた何かが始まったんだと思う」と、14年前のワールドカップを振り返った。

取材・文●広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

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