「佐世保玉屋」7月末閉店 建物の老朽化など理由に再開発へ 新たな事業計画を策定中

老朽化などにより7月31日で閉店することになった佐世保玉屋=佐世保市

 佐世保市栄町の老舗百貨店「佐世保玉屋」(田中丸弘子社長)が建物の老朽化に伴う耐震化の必要性などを理由に、7月31日で閉店することが29日、分かった。玉屋は「再開発事業の中で新たな事業計画を策定中」としており、一帯で計画されている再開発事業の動きが注目される。
 1806年に佐賀県で呉服店として創業したのが始まりで、1920年に佐世保で百貨店を開業。現在の建物は8階建てで、敷地面積は約2960平方メートル。新型コロナウイルスの影響で営業規模を縮小し、現在は1、2階で営業している。
 佐世保玉屋は29日、取引先に閉店する旨を通知。「一度閉店した上で新たな佐世保玉屋へ生まれ変わる」としている。
 玉屋一帯の約5千平方メートルのエリアでは再開発が計画されており、権利者9者が検討を行う「栄・湊地区市街地再開発準備組合」を2021年に設立。田中丸社長が理事長を務めている。22年12月には、佐世保市も国からの補助も含め約1300万円を投じ、建物のイメージなどを盛り込んだ施設計画の概要を策定。しかし、具体的な内容は決まっていない。
 副理事長を務める「わいんのこが」の古賀公至郎代表は「再開発を進めるタイミングの中での、閉店のニュースは計画に影響があるかもしれないが、前向きに考えていきたい。商店街の活性化に必要な事業」と語る。市まち整備課は「市として今後もできる支援は続けていきたい」としている。
 一方、佐世保玉屋に対しては、耐震改修促進法における耐震診断の結果報告に関する命令が出されている。市は17年に、18年3月末までに耐震診断の結果を報告するよう命令。22年3月末までに建て替え工事に着手すると回答したが、現在も着工しておらず、耐震診断の結果も報告していない。昨年、今年5月末を期限とする4度目の命令が出されている。
 田中丸社長は「再開発を進めるために、いったん閉店しないといけない。計画は今後明らかにしたい。中心市街地活性化のため、新しい形で地域の皆さんの役に立ちたい」と話している。
 佐世保玉屋が長崎市で運営していた長崎玉屋は、老朽化などにより14年に閉店。跡地一帯の再開発で22年に複合施設「新大工町ファンスクエア」がオープン、玉屋は2階で営業している。

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