FA杯で再戦、チェルシーとリーズの熾烈なライバル関係…50年以上前の“イングランドのフットボール史上最も残酷な試合”【現地発】

2月28日、ロンドンのスタンフォード・ブリッジで開催されたFAカップ5回戦のチェルシー対リーズを取材した。

チェルシーはプレミアリーグ、リーズはEFLチャンピオンシップ(2部)を戦っており、リーグのカテゴリーが違うため、この2チームには大きな差があると思うかもしれない。しかし、イングランドのサッカー界で成功を収めてきたという点では、どちらも長い歴史を持っている。

さらに、チェルシーとリーズは1970年代までさかのぼる熾烈なライバル関係がある。イングランドの北部と南部のチームというのもあって、もともと互いをライバル視し合っていたのだが、特に1970年のFAカップ決勝は今でも忘れられない。この一戦は、イングランドのフットボール史上最も残酷な試合として記憶されている。

当時、両チームともハードなプレーを特徴とするタフな選手たちが多かったのもあり、今では考えられないような削り合いや、激しい肉弾戦が至る所で繰り広げられたのだ。当時の審判は今よりもずっと甘かったのも問題だったかもしれない。

【動画】チェルシー対リーズ、FA杯5回戦のハイライト
そしてFAカップでの再戦となった今回の試合では、チェルシーは3日前に行なわれたカラバオカップ決勝でリバプールに敗戦後、最初の試合に臨んでいた。

一方のリーズはリーグ戦では好調だ。この一戦でプレーしていたリーズのアーチー・グレイは、1970年のFAカップ決勝のチェルシー戦でプレーした選手の孫にあたる。スタジアムにはアウェーにもかかわらず、ゴール裏はリーズファンで埋め尽くされていた。

さて、試合はどうだろうか。11分にリーズが先制点を決め、6000人のファンは大熱狂。しかしその喜びは長くは続かず、7分後にチェルシーが同点に追いついた。さらに37分には勝ち越しゴールをゲット。プレミアの意地を見せつけた。対するリーズも59分に同点弾を奪って粘りを見せたが、終了間際にチェルシーが再びネットを揺らして勝利を収めた。

チェルシーは今季、ヨーロッパのコンペティションに参戦しておらず、プレミアリーグの優勝の可能性もほぼ消滅している。彼らにとって、このFAカップが残されたタイトルだ。

文●スティーブ・マッケンジー(サッカーダイジェスト・ヨーロッパ)

著者プロフィール
スティーブ・マッケンジー/1968年6月7日、ロンドン生まれ。ウェストハムとサウサンプトンのユースでプレー経験がある。とりわけウェストハムへの思い入れが強く、ユース時代からのサポーター。スコットランド代表のファンでもある。大学時代はサッカーの奨学生として米国で学び、1989年のNCAA(全米大学体育協会)主催の大会で優勝した。現在はエディターとして幅広く活動。05年には『サッカーダイジェスト』の英語版を英国で出版した。

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