被災女児が侍ジャパン始球式 6日の欧州代表戦 輪島・徳野さん、七尾・扇さんバッテリー

侍ジャパンの強化試合で始球式を務める徳野さん(左)と扇さん=3日午前11時15分、輪島市河井小

  ●6日、大阪で試合「能登の人に喜んでほしい」

 6日に大阪で開催される野球の日本代表「侍ジャパン」の強化試合で、輪島、七尾で被災した女子児童が始球式のバッテリーを務める。それぞれ地元学童野球チームに所属する徳野由子さん(12)=輪島市河井小6年、扇瑠花さん(12)=七尾市山王小6年=で、昨年石川選抜チームで全国ベスト8に入ったメンバーだ。ひな祭りの3日、能登半島地震後、初めて一緒に練習した2人は大舞台を前に「しっかり役目を果たして能登の人に喜んでほしい」と笑顔を見せた。

 徳野さんは輪島クラブ、扇さんは山王クラブで男児に交じって白球を追った。昨年7月、金沢で開催された女子学童野球の全国大会(北國新聞社後援)には、ともに石川選抜チーム「輝(かがやき)プリンセス」の一員として出場。徳野さんは投手、扇さんは外野手を務め、ベスト8に入った。

 地震を受け、徳野さんは輪島中での車中泊と、河井小に移っての避難所暮らしを経験した。2週間後に自宅に戻ったものの、最近まで断水が続いた。

 扇さんは父親が勤務する七尾市内の介護施設に一時避難。その後は自宅で生活をしたが、2月中旬まで水道が止まった状況だったという。練習場所のグラウンドはどちらも使用できなくなった。

 侍ジャパン側からの打診を受け、2月に入って石川県学童野球連盟が始球式を務める児童を能登地区から募集すると、扇さんが徳野さんを誘って応募。90人の中から徳野さんが投手、扇さんが捕手として選ばれた。

 2月26日に決定通知が届き「びっくりして夢かと思った」と扇さん。徳野さんも「きゃーっと叫んで家中を走り回った」と振り返り、ファンだというオリックス・宮城大弥(ひろや)投手に会いたいとはにかむ。

 徳野さんの母めぐみさん(42)は「避難所でも『由子ちゃん、頑張っとったもんねえ』と涙を流して喜んでくれたおばあちゃんがいて、うれしかった」と娘の大役に目を細める。

 3日、2人は河井小体育館下のスペースで、これまで使っていた軟式球ではなく、本番で投げる硬式球でキャッチボールした。捕手初挑戦の扇さんは防具を着けての練習にも取り組んだ。徳野さんは「地元のみんなが元気になるよう、力一杯ど真ん中に投げる」、扇さんは「能登の代表として由子ちゃんの球をしっかり受けたい」と意気込んだ。

 侍ジャパンが欧州代表と対戦する強化試合は6日、京セラドーム大阪で行われる。

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