富山に感謝、珠洲戻る 水通らず生活困難でも 2次避難者、春に新たな一歩

従業員や避難者に見送られ、珠洲市に向けて出発する池水さん家族(両端)=富山市内のホテル

 能登半島地震で珠洲市の被災者が2次避難する富山市のホテルテトラリゾート立山国際で、ふるさとでの生活再建を目指し、珠洲に戻る人が出てきた。水道が復旧しておらず、生活は苦しいままだが「少しずつ日常を取り戻す」と被災者。将来的な帰郷を見据え石川県内の公営住宅やみなし仮設住宅などに移った人もいる。温かくもてなしてくれたホテルへの感謝を胸に、春に新たな一歩を踏み出している。

 「本当によくしてもろた」。4日、ホテルで昼食を終えた池水篤吏さん(40)=珠洲市大谷町=は母とともに、仲良くなった従業員の元にあいさつに訪れた。感謝の言葉を伝えるさなか、「また来るが待っとるよ」と涙ぐむ従業員。他の避難者数人も玄関まで駆け付け、車でホテルを後にする池水さん家族を見送った。

 池水さんは71歳の母、45歳の姉とともに1月20日にホテルに到着した。自宅は罹災証明で「一部損壊」の判定を受け、部屋の片付けを進めれば生活できるという。水道は復旧していないが「仕事に復帰できるのが大きい。自分は今月中旬からまた働き、姉も仕事が始まりそうだ。水は何とかする」ときっぱり。ホテル避難を振り返り「快適でスタッフも優しく、感謝しかない」と別れを寂しがった。

 午前中には別の家族3人が金沢市内のみなし仮設住宅に移った。

 同ホテルには、1月20日に珠洲市からの集団避難の第1陣44人が到着。その後も集団と個別で避難が続き、最大で124人を受け入れた。従業員は被災者の声を聞きながら細やかなサービスに努め、被災者も少しでも負担を減らそうと配膳業務を手伝うなど互いに気遣って絆を深めてきた。

 これまでに31人がホテルを離れ、石川県によると、退所した避難者は自宅に戻ったり、金沢市内のみなし仮設や公営住宅、石川県外の親族宅などに移ったりしているという。

  ●受け入れ延長で調整

 一方、ホテルには4日時点で93人が滞在。今月中にホテルを離れる考えの人もいれば、先行きを見通せず不安を募らせる人も少なくない。夫婦で身を寄せる谷信次さん(73)=珠洲市宝立町=は「自宅は辛うじて寝ることはできると思うが、電気も水も通っていない。仮設住宅にいつ入れるか分からず、ぎりぎりまでホテルにいさせてもらえると助かる」と話した。

 同ホテルは石川県が2次避難先として登録。受け入れ期間は今月末を予定していたが、延長に前向きなホテルの協力により関連機関での調整が進められている。石川県は国の観光支援策「北陸応援割」で、4月以降も2次避難者を受け入れる同県の事業者に予算を追加配分する。富山県も多くの2次避難者を受け入れている事業者が、応援割の恩恵を本来の形で受けられるよう支援を検討している。

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