中国、24年国防費は7.2%増 台湾統一巡り「平和的」の文言削除

Yew Lun Tian Laurie Chen

[北京 5日 ロイター] - 中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)が5日開幕し、2024年国防費を前年比7.2%増の1兆6700億元(2306億ドル)とする方針が示された。23年の国防費目標も7.2%増だった。

今年の経済成長率目標である5%前後を上回るペースで国防費を拡大させる。習近平国家主席が就任した13年の7200億元から、ここ10年余りで国防費は倍以上に膨らむことになる。

例年通り内訳は示さなかった。

英国際戦略研究所(IISS)のデータによると、中国の国防費拡大は30年連続。

ラジャラトナム国際関係学院(RSIS、シンガポール)の安全保障問題専門家、ジェームズ・チャー氏は、国防予算はGDP(国内総生産)の伸びを上回っているにもかかわらず、過去10年間はGDP全体の1.3%程度にとどまり、財政を圧迫しなかったと指摘。「もちろん、この状態を今後も維持できるかどうかは国の長期的な経済状況によって決まるだろう」と語った。

また、中国軍にとっては高官が相次いで兵器調達に絡んで失脚する中、リソース管理の引き締めが優先事項になるとの見方も示した。

台湾を巡る緊張が高まる中、周辺国や米国は中国の戦略的な意図や軍備増強を警戒し、国防費の水準を注視している。

政府活動報告によると、24年の経済成長率目標も昨年と同水準となる5%前後に据え置いた。

<台湾>

中国は今回、台湾に関する文言を強化。李強首相は政府活動報告で「統一の理念を断固として推し進める」とし、「平和的統一」としていた従来の表現を修正した。

「平和的」という表現を削除するのは初めてではないが、中国の台湾に対するスタンスを判断する上で、文言の修正は注目されている。

別の報告では「『台湾独立』を目指す分離主義的な活動や外部からの干渉に断固として反対する」と表明した。

RSISの防衛学者、リ・ミンジャン氏は、中国は景気が振るわないが、国防支出において台湾は主な留意点と指摘。「戦争になった場合、勝利できる水準にまで軍を強化する意向だ」と述べた。

米シンクタンク、アトランティック・カウンシルの政治学者でノンレジデントフェローのウェン・チスン氏は、台湾に関する文言は「やや強めになった」とし、「台湾への強硬姿勢と台湾の友好国との関係の間で、バランスを取ろうとしているようだ」と語った。

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