九年庵、公開期間拡大へ保存活用推進 県が整備基本計画案

経年劣化などの課題への対応が求められている九年庵。佐賀県が、保存と活用それぞれの観点から整備基本計画案をまとめた=神埼市神埼町

 経年劣化や耐震が課題となっている名勝「九年庵」(神埼市神埼町)に関し、佐賀県は保存と活用の優先順位を整理した整備基本計画案をまとめた。緊急性と優先度に応じて前・中・後期の3段階に分けて整備に取り組む。公開期間の拡大も目指し、庭園内での飲食や主屋での宿泊なども例示した。2024年度は石垣の保存整備などに取り組むため、当初予算案に関連経費を計上している。

 九年庵は年2回、春の新緑と秋の紅葉の季節に一般公開している。多くの来場者が景観を楽しむ名所となっている一方、経年による建物の劣化や耐震、防災などの課題を抱えている。文化財としての保存と活用を図るための基本計画を策定する。

 保存では、1995年の名勝指定時の状態を基準に修復を進める。活用では、公開期間の拡大や、現在は非公開となっている山林、建築物の公開機会を設けられないか検討する。九年庵で想定される活用案としては、庭園や主屋での飲食、宿泊サービスの提供、イベント実施などを挙げている。

 スケジュールでは、当面は2024~26年度にかけ建物の修復・整備など優先度の高い保存面での整備を「前期段階」と位置づけて取り組む。活用に向けた中期以降の取り組みや整備期間は、今後の利活用を具体化しながら検討を進める。来年度事業費1600万円のうち、国からの補助金460万円を充当する。

 県政策部MIGAKI(ミガキ)チームは「九年庵の価値をしっかり見せる、高めるための整備基本計画にしたい」としている。

 計画案のパブリックコメント(意見公募)を22日まで受け付け、本年度中に計画を策定する。詳細は県ホームページで紹介している。(山口貴由)

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