被災者から「逆に元気もらった」 能登半島から日本酒、雪割草など届く 食の支援通じ 新たな縁

被災地の集会所で、弁当を作るとちぎ弁当連絡協議会のメンバー=2月23日午後、石川県輪島市(とちぎ弁当連絡協議会提供)

 能登半島地震の被災地を支援する中、現地からお礼が届くなどして生まれた交流が関係者の心を温めている。栃木県内の給食・食品事業者らでつくる「とちぎ弁当連絡協議会」は2月、自主避難者が暮らす石川県輪島市内の集会所を訪れ、炊き出しで計700食超を提供した。その縁で同市内の酒造会社から、何とか難を逃れた出荷前の日本酒の一升瓶を「最後のお酒」と手渡された。ある女性からは春の訪れを告げる「雪割草」が届いた。同協議会の会員からは「逆に元気をもらっった」との声が聞かれる。

 同協議会は1月末、認定NPO法人「とちぎボランティアネットワーク」から依頼を受け、被災地での炊き出しを計画した。同協議会には約50社が加盟。2014年の設立以来、被災地支援は初めてだった。

 会員企業が協力し人員や調理器具、食材などを準備。第1弾として2月10日、調理師や管理栄養士ら6人が車で出発し、輪島市の集会所に入った。10日の夕食と翌11日の朝昼晩の計4回、自主避難者や近隣住民、隣接する珠洲市内の住民らに計300食を提供した。

 高齢者が多く、献立は薄味のシンプルな料理が中心。たけのこの炊き込みご飯や鶏団子汁など、レトルト食品にはないメニューを意識した。本県産のイチゴ「とちあいか」も届けた。

 同月23~24日には第2弾として調理師ら6人が同じ集会所で炊き出しを行い、計435食を振る舞った。

 食を通じた支援に、被災者からのお礼もあった。

 集会所に隣接する酒造会社は酒蔵が倒壊。出荷前だった日本酒の多くが被害に遭ったという。同社の女性は「これが最後のお酒」と、割れずに残った数本の一升瓶を同協議会の仲川久雄(なかがわひさお)事務局長に手渡した。協議会のメンバーで大事に飲み、コク深い味わいだったという。

 またピアノを教えているという女性からは、雪割草が届いた。炊き出しに参加した同協議会事務局の入江成子(いりえしげこ)さん(52)は「ありがとうの一言だけでうれしいのに。逆に元気をもらえた」と笑顔を浮かべた。雪割草は事務所で育てており、希望する会員に譲る予定。入江さんは「少しでも復興につながるよう今後もできることをしたい」と話した。

炊き出しのお礼として、被災者から贈られた日本酒や雪割草を眺める入江さん=2月下旬、宇都宮市

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