井上尚弥に挑戦するネリは「精神的にタフ」 識者指摘、過去2度の失態も「緊張したりビビったりすることはない」【5・6東京ドーム】

プロボクシングの世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥(大橋、30)が2024年3月6日、都内で会見を行い5月6日に東京ドームで元世界2階級制覇ルイス・ネリ(メキシコ、29)と世界タイトルマッチを行うことを発表した。東京ドームでのボクシング興行は90年2月のマイク・タイソン(米国)対ジェームス・ダグラス(米国)戦以来34年ぶりとなる。

「モンスター」井上に挑戦するネリはどのようなキャリアを歩み、どのようなタイプのボクサーなのか。J-CASTニュースは、数々の世界タイトル戦をプロモートし多くの世界王者を育てた経験を持つTMKジムの金平桂一郎会長(58)に分析してもらった。

「1発当たるとそこから二の矢、三の矢が止まらない。それで山中選手もやられた感じ」

ネリはサウスポースタイルで身長165センチのファイタータイプだ。17年8月に当時のWBC世界バンタム級王者・山中慎介(帝拳)に挑戦し4回TKO勝利で王座を獲得した。試合後ドーピング疑惑が浮上したがWBCの処分はなかった。18年3月の再戦は前日軽量で体重を超過し王座をはく奪されるも2回TKOで全勝をキープした。

20年9月にはWBC世界スーパーバンタム級王座決定戦を制し、無敗のまま世界2階級制覇を達成。21年5月にWBA世界スーパーバンタム級王者ブランドン・フィゲロア(米国)と2団体王座統一戦に臨むも7回にボディーでダウンを喫しKO負け。プロキャリア初黒星となった。

金平会長は「ネリ選手は好戦的なサウスポー」とし、ネリのボクシングスタイルなどを解説した。

「パンチはそこまで破壊力抜群というわけではないがある。特徴的なのは1発当たるとそこから二の矢、三の矢が止まらない。それで山中選手もやられた感じでした。強引に打ってくるので、そこでハマると大変なことになる場合もあります。現在のスーパーバンタム級の中ではネリ選手のレベルは高い。危険な選手だと思います。サウスポーでしつこい連打を打ってくる。連打は速いというよりも止まらない印象です」

そして「弱点はボディーと言われており実際のところそうかもしれませんが、ボディーで倒された試合(フィゲロア)は打ち合いの中でタイミングよくボディーが入った。これをもってボディーが弱いとはならないと思います。ただ勝負を分けるのは井上選手のストレートなりボディーアッパーなり右ボディーになると思います」と指摘した。

「ネリは井上選手がこれまで対戦してきた選手にはいないタイプ」

金平会長はネリの過去の試合から短所と長所をそれぞれ挙げた。

「ネリの短所はスピードがないところ。スタミナに関してもそれほど豊富ではないと思います。後半に失速する試合もありました。これらが井上選手と対戦して厳しいとされる要因です。逆に言えば、序盤に良いパンチを当てると調子に乗るタイプ。ネリ選手のベストパンチが当たれば分からないというところもある」

長所は精神的な強さとした。ネリは過去2度の日本のリングでドーピング疑惑や体重超過の失態を犯し、日本のボクシングファンの中には「嫌悪感」を抱く者も少なくない。それだけに試合当日はネリに対するブーイングなどが予想される。

金平会長は「ブーイングは想定内でしょう」とし、次のように解説した。

「井上選手が対戦してきた選手の中でネリ選手がトップだとは言えませんが、トップクラスに並ぶ選手。なんだかんだありましたが、やはり山中選手に2度勝っていますし。メンタル面が強いと思います。精神的にタフな選手で緊張したりビビったりすることはないでしょう。ですのでメンタルで潰れることはないと思います。井上選手がこれまで対戦してきた選手にはいないタイプだと思います」

5月6日は井上対ネリ戦の他に3つの世界タイトルマッチが予定されており、世界的な注目を集めている。

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