爆発的繁殖力の外来水生生物 佐賀市、除去作業に苦慮 5年間で対策費倍増、農業被害も

繁茂したナガエツルノゲイトウの除去作業=佐賀市嘉瀬町(佐賀市提供)

 爆発的な繁殖力で農業被害などをもたらす特定外来生物で水生植物の「ナガエツルノゲイトウ」や「ブラジルチドメグサ」が、佐賀市内のクリークや河川で繁茂を続けている。水位を調整する樋門や排水ポンプなどの機能に支障が出かねず、市は水面や根から除去し続けているが抜本的な解決策はない。対策費は2022年度に7154万円と、この5年間で倍増。一度除去しても残った部分から再生する力があり、堂々巡りの状況に市は苦慮している。

 ナガエツルノゲイトウは南米原産の多年生の浮遊植物で、長く折れやすい茎を持っている。河川やクリークに群生し、茎の切れ端からでも再生、繁殖するほか、長期間の乾燥にも耐える。一度農地に侵入すれば、農地を覆い、農作物の収量や品質、作業効率の低下を招く恐れもある。市内では2010年に初めて確認された。

 ブラジルチドメグサは15年に初確認。南米産の多年生の浮遊植物で扁平(へんぺい)な葉が特徴で、ナガエツルノゲイトウ以上に生育が速い。生育面積は把握できる農業用水路だけでも約10万平方メートルに拡大。ブラジルチドメグサが本年度初めて高木瀬地区で確認されるなど、まちなかにも広がっている。

 市農村環境課には農家から「ポンプの周りに繁茂し、支障が出ている」との相談が寄せられている。市は重機や人力で除去を行ったり、繁茂の激しい地区では、水路ののり面にコンクリートを張り付けたりと対策を行っている。一見、きれいに片付いたと思っていても、翌年にはびっしり繁茂したケースも。繁殖力の強さが、担当者を悩ませる。

 対策費も膨らんでいる。事業費(決算額)は、18年度の3540万円が22年度は7154万円と倍以上になった。市幹部の一人は「小中学校の給食費値上げ分を補助する費用を上回る額」とし、厳しい財政状況の中で対策事業が大きな負担となっていると指摘する。

 除去の相談が増えるのは例年、春先から。市は地元の協力も広げていこうと、「切れ端を回収する」「根から取り除く」といった市民への周知も始めた。市環境政策課は「繁茂が小規模な段階で、効果的に除去できるよう考えていきたい」とする。(川﨑久美子)

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