千年先も集落で… 地域の酒「大林千年」完成 10年前の広島土砂災害 復興支援に取り組む若者グループが仕込み

「大林千年」(おおばやしせんねん)という酒をご存知ですか。10年前に土砂災害を受けた広島市安佐北区大林町の復興を支援しようと、若者らのグループが自らコメを栽培して造った酒です。ことしの酒造りにカメラが密着しました。

広島市安佐北区可部の旭鳳酒造です。先月初め、近くの大林町で活動する「ふるさと楽舎」のメンバーが集まりました。地域の酒「大林千年」の仕込みを手伝うためです。

旭鳳酒造 濵村洋平 杜氏
「皆さんの力を借りて地域のものが出来上がるっていうのは大きくて。きょうもすごく嬉しいです」

ふるさと楽舎メンバー(大学3年)
「おコメがどうやって酒に変わっていく瞬間を見られるのが、すごく楽しみにしている」

「ふるさと楽舎」が活動する安佐北区大林町桧山地区…。10年前の広島土砂災害の被災地です。グループはここで休耕地の再生に取り組みながら、20アールの田んぼを借りてコメを作っています。

そのコメで作るのが「大林千年」です。大林町が千年先も集落であるようにという願いを込めた、復興支援の酒です。

コメが蒸し上がりました。グループにとって3回目の酒造りです。

ふるさと楽舎 馬場田真一 プロジェクトリーダー
「杜氏にバトンタッチのタイミングなので。あとは頼んだというドキドキワクワク、ワクワクが強いですね」

まず蒸し上がったコメを冷ましたあと、麹をふりかけ布に入れて包みます。

包みの重さは約10キロ。これをメンバーがリレー方式で仕込み蔵に運びます。最後に仕込みタンクに投入し、発酵させます。

杜氏の濵村さんは新たな挑戦をしていました。一般に酒造りは雑味を抑えるため、コメを多く削りますが、「大林千年」ではできるだけ削らずに味のよさを追求したのです。

「ふるさと楽舎」のコメ作りで、以前、害虫による大きな被害を受けたからでした。

旭鳳酒造 濵村洋平 杜氏
「それまですごい順調に育っていたのが、全部ボッコリ使えなくなって、収穫量が4分の1とかになってしまったのがあったので、できるだけお酒にしてあげたいな」

こうした酒造りは、異常気象でコメが作りづらくなる中、ますます必要だと濵村さんは考えています。

新酒の完成を告げる杉玉もメンバーが作りました。杉の枝は桧山地区の山で採取しました。これを発砲スチロールの芯に差して作ります。

仕込みから1か月ー。「大林千年」の新酒が完成しました。さっそくメンバーが仕込み蔵を訪ねました。

まずは杜氏の濵村さんが味をみます

旭鳳酒造 濵村洋平 杜氏
「いいと思います。安心します」

濵村さんの狙い通り、うま味のあるキリッとした味を出せたようでした。

ふるさと楽舎メンバー(会社員)
「おいしいですね、フルーティーで」

ふるさと楽舎メンバー(大学3年)
「田んぼの土作る段階から関わり始めて。ゴールを初めてやっと見られたっていう感じです」

ふるさと楽舎 馬場田真一 リーダー
「ここからこのお酒を使って、次の仲間づくりがって思うと、可能性を秘めたものすごい嬉しいものになっています」

「大林千年」は早ければ今月末に発売。収益金の一部はメンバーの活動費にあてられます。

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