集団避難そろって帰郷 輪島・鵜入集落、6世帯10人

11日に6世帯10人が一斉に帰宅する輪島市鵜入町

  ●11日、能美から 「やっぱり住み慣れた場所がいい」

 能登半島地震により、ライフラインが寸断されて一時孤立状態となり、能美市に集団避難している輪島市鵜入(うにゅう)町の6世帯10人が11日、一斉に帰宅する。同様の集団避難は輪島で約930人、珠洲でも約350人が余儀なくされたが、住民がまとまって集落に戻るのは初めて。住民たちは道路、電気の復旧に合わせ、ふるさとでの生活を選択、市は共同生活の継続がそろっての帰宅につながったモデルケースとして歓迎し、インフラの再建を急ぐ。

  ●共同生活が継続

 鵜入町は市中心部から西に約6キロ離れた海に面した集落で、地震前は約20世帯が暮らしていた。

 元日の地震で、集落へとつながる県道は一部が大規模な土砂崩れで寸断され、停電となって携帯電話もつながらなくなった。山水を利用した簡易水道は使えたという。

 1月18日に9世帯16人が自衛隊のヘリコプターで集落を離れ、能美市の辰口福祉会館での生活が始まった。その後、仕事のため一足先に戻ったり、親類が用意したアパートに移ったりした人はいたが、現在も7世帯11人が集団避難を続けている。

 道路の土砂崩れ箇所は、2月中旬に迂回(うかい)路が整備され、同19日に電気が戻った。ライフラインが整ったことから、区長の濵野勝己さん(71)が辰口で一緒に避難する住民に今後を尋ねたところ、そろって帰ることになった。

 鵜入町には現在、避難せずに残った世帯に加え、親類宅などから戻った計5世帯が暮らす。

 金沢に住む長女の家に身を寄せていた漁師の坂下伊三雄さん(76)は、2月21日から妻と自宅で生活を始めた。近所の仲間が一斉に帰ってくることを知り、「昔から知った顔に会えるのはうれしい」と喜んだ。集落にとどまった宮前政喜さん(71)は「倒木除去など、みんなで力を合わせてやりたい」と述べた。

  ●土砂崩れの不安

 11日は6世帯10人が県が用意したバスで、1人は自家用車で戻るとみられる。避難して以来初めて帰宅する濵野さんは「能美市では大変良くしてもらったが、やっぱり住み慣れた場所がいい」とする。一方で「余震でまた土砂崩れが起きないか心配する人もいる」と不安ものぞかせた。

 集落が点在する輪島市では、鵜入町がある大屋や南志見、西保地区などの約930人が集団避難した。市の担当者は「集団で避難したため、コミュニティーが保たれ、一斉帰宅につながったと考えられる。他の集落の方々が一日も早く戻れるようライフラインの復旧に努める」としている。

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