文化財被害202件 能登8市町、4分の1未調査

文化財レスキュー事業で解体される金刀比羅神社本殿=2月22日、七尾市三島町

 輪島市を除く能登8市町は8日、国や石川県、市町指定の文化財202件が能登半島地震の被害に遭ったとする調査結果(2月末現在)をまとめた。神社仏閣の損傷が目立ち、建物に残ったままの絵画や彫刻品が多い。道路の寸断で現場までたどり着けないケースもあり、全文化財の4分の1に当たる408件は未調査。被災数はさらに増える見込みで、各市町は国や県と連携した「文化財レスキュー」で散逸を防ぐ。

 8日、能登文化財保護連絡協議会の役員会が開かれ、2月末現在の9市町の調査結果が報告された。文化財全1627件のうち842件は「被害なし」とした一方、被災文化財は判明している分で能登町の71件が最も多く、七尾市52件、志賀町20件、珠洲市16件と続いた。国立文化財機構文化財防災センター、北國総合研究所の関係者も出席した。

 国重要文化財では黒丸家住宅(珠洲市)や真言宗明泉寺(穴水町)の石造五重塔で損傷が見つかり、国史跡「七尾城跡」(七尾市)の石垣も被害に遭った。奥能登では道路状況が悪かったり、文化財所有者と連絡が取れなかったりして調査が難航している。

 協議会は1月下旬、大規模な震災後は文化財の散逸や廃棄リスクが高まるとして、各市町に早期の被災状況の取りまとめを依頼。2月からは国や県、市町が協力する「文化財レスキュー隊」が文化財の救出を進めており、11日には能登町に現地本部が開設される。

 文化財レスキュー事業の救助要請は、協議会が一般財団法人・北國総合研究所(金沢市)の協力を得て取りまとめてきたが、4月以降は国と県に活動を移行したい考えである。

 東四柳史明会長(金沢学院大名誉教授)は「被災文化財の情報集約を進める当初の目的を達成できた。文化遺産の継承なくして能登の復興はない」と強調し、今後は保護活動を側面支援していく方針を示した。

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