受刑者がVRで職業体験 さくらの喜連川社会復帰促進センター、国内初の試み 就労継続や再犯防止へ

VRを活用して食事介助を体験する受刑者ら=8日午後、さくら市喜連川(写真は一部加工しています)

 仮想現実(VR)のシステムを使って受刑者が仕事を疑似体験する取り組みが8日、栃木県さくら市喜連川の喜連川社会復帰促進センターで行われた。受刑者が仕事のイメージをより現実的につかむことで、出所後の継続した就労や再犯防止につなげるのが目的。法務省は同センターでの効果を検証し、他の矯正施設でも採用するか検討するという。

 受刑者の社会復帰を支援する日本財団の「職親プロジェクト」の一環で、同財団と法務省が共催した。同省によると、国内初の試み。

 体験したのは建設と介護の2業種で、男性受刑者計12人が参加した。介護体験では30~60代の5人が食事の介助に挑戦。VR用のゴーグルを装着し、コントローラーを操作して食事を口に運んだ。VR映像に表示される指示に従い「よくかんでくださいね」などと声をかける場面もあった。

 体験した60代の受刑者は「利用者に寄り添う大切さが分かった。年齢的に働くことを諦めていたが、就職して家族に恩返しがしたい」と話した。「ケアマネジャーを目指したい」と目標を口にする受刑者もいた。

 同省などによると、受刑者の中には、就労しても実際の仕事の内容がイメージと異なり長続きしない人がいる。VRの活用で大型機械を使う仕事などの体験も可能になり、幅広い職種で仕事のイメージと実際の内容とのミスマッチを防ぐ効果が期待できるという。

 指導役を務めた介護関連会社「寿寿」(大阪府)の児林健太(こばやしけんた)代表取締役(40)は「介護の現場で生き生きと働く元受刑者もいる。教科書では分からないことを、VRで体験できると感じた」と語った。同省成人矯正課の担当者は「VRならば機材搬入などの負担がなく効率的に就労支援を行える」と話した。

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