阿部詩選手、善意の柔道着 小松の折戸さんに届く アスリートら物資支援

県柔道連盟に寄せられた阿部選手の柔道着=金沢市の県立武道館

 小松市島町の折戸智さん(62)一家に9日までに、能登半島地震で被災したスポーツ選手に役立ててもらおうと、全国の競技関係者から支援物資が続々と届いた。折戸さんの3人の子どもは全国大会で活躍しており、道具を失った被災者を助けようと、交流サイト(SNS)で呼び掛けた。柔道の東京五輪金メダリスト阿部詩(うた)選手からの柔道着も含まれ、折戸さんは感謝している。

  ●輝の親族避難の縁

 きっかけは被災した大相撲の輝(七尾市出身)の姉を折戸さん宅で受け入れたことだった。折戸さんの次女智恵さん(28)が輝の友人で、自宅の空いた部屋で過ごしてもらうことを輝に提案。輝の姉ら6人が1月4日から約2週間、2次避難した。

 輝の姉の子どもは柔道をしており、柔道着が津波で流されたことや他の競技でも練習場所が地震で使えなくなっていることを聞いた。智恵さんらきょうだいがSNSで競技関係者らに被害の現状を伝え、支援物資を求めたところ、全国各地から阿部選手の柔道着2着を含むスポーツ用品や日用品、文房具などの物資が段ボール60箱分が届いた。

 柔道着の計10着は県スポーツ協会を通じて県柔道連盟に寄託した。同連盟によると、地震で道場が被災した5チームに使ってもらう予定としている。10日に金沢市の県立武道館で開かれる児童の大会でお披露目する。

 県柔道連盟の上田重隆会長は「震災で疲弊した子どもたちは大変勇気づけられると思う。心より感謝し、今回の支援を頑張る糧にしてほしい」と話した。

 折戸さん一家は、智恵さんが小学6年で走り幅跳びで日本一となり、同志社大ではテコンドーでも全国制覇した。長男謙典さん(34)は金沢星稜大サッカー部で北信越4冠を達成。長女田中志都佳さん(31)は小松市立高時代にハンドボールで日中韓大会の日本代表に選ばれた。折戸さんは「全国で戦ってきたスポーツ選手の縁や力は素晴らしい。皆さんの行動に感激している」と喜んだ。

阿部詩選手

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