89歳、神戸から東京へ自転車旅 長男宅目指し電動アシストで 明石で写真店営んだ谷上満夫さん「人との出会い楽しみ」

自宅前で愛車とともに立つ谷上満夫さん=神戸市西区

 兵庫県明石市内で写真店を営んでいた89歳の谷上満夫さん(神戸市西区)が、電動アシスト自転車で東京へ旅立つ。自転車の旅の魅力に目覚め、今回は長男の直也さん(61)が住む東京を目指す。近く出発する予定で「人との出会いや景色が楽しみ」と目を輝かせる。(森 信弘)

 谷上さんは明石駅南の明石銀座商店街で2017年まで60年以上にわたって写真店を営んだ。仕事の傍ら50代で彫刻を始め、日展や公募展に応募するなどしてきた。特に持病はなく、健康に過ごしている。

 アシスト付き自転車に乗り始めたのは1年ほど前。知人に借りてその快適さに驚き、数キロなら自転車で行くようになった。

 昨年10月には、姉の墓参りのため岡山県の蒜山高原へ2泊3日の旅に出た。直也さんが宿泊先などの計画を立ててくれたが、結局その場で決めた宿に泊まった。パンクにも見舞われたが、食事した店でバッテリーを充電させてもらったり、宿を紹介してもらったりと人の優しさにも触れた。

 さらに、亡くなった妻の出身地である兵庫県新温泉町にも1泊2日で出かけた。大手電機メーカーで働く直也さんは、海外でも活躍してきた。自転車の旅に自信を付けた谷上さんは「自分も大変なことをやってやろう」と東京行きを決めた。

 直也さんが待つ東京都杉並区までは約600キロ。計画ではまず2日かけて愛知県扶桑町に住む長女宅を訪ねる。その後、5日ほどかけて向かうつもりだ。国道を中心に走り箱根峠を越える予定で、地図を見ながら想像を膨らませる。宿泊先は決めず、行き当たりばったりの予定。日の出が見られるところに泊まりたいという。

 自転車の後部には反射材を付けるなど、安全には気を配る。それでも「旅の不安はなく、期待が大きい」と言い切る谷上さん。「食事に入った店でいろんな人と話し、自分の知らないことを教えてもらいたい」。直也さんは「心配はあるが昨年の経験もある。チャレンジを応援したい」と到着を待つ。

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