SNS映え間違いなし! よみがえる「赤れんが壁」 神戸・灘のシンボル かつて景観大賞、1.17で全壊

凹凸の出る特殊塗料で試し塗りしたれんが調の壁の前で話すサザンモール六甲の植村浩史社長=神戸市灘区新在家南町1、サザンモール六甲B612

 神戸市灘区の臨海部で、ランドマーク的存在だった赤れんがの壁を復活させるプロジェクトが進んでいる。約半世紀前まで小泉製麻の紡績工場や倉庫、その後も商業施設に使われたが、1995年の阪神・淡路大震災で全壊。今は「サザンモール六甲B612」として買い物客でにぎわう。プロジェクトは施設改修を機に浮上。本物と見まがう凹凸のある塗装で、かつての雰囲気を再現する。 (塩津あかね)

 同社は1890(明治23)年に創業。サザンモールを含む土地には、本社や日本初の黄麻(ジュート)の工場、倉庫が立ち並んでいた。

 製造拠点を他に移すなど工場、倉庫の役割を終えた後、同社が1982年に第1工場跡で家具を扱う「六甲パインモール」を開業。91年に商業施設「ROKKO23(ヴァントワァ)」に再整備した際も、れんが造りの建物はそのまま使われた。92年に建設省(現国土交通省)の「都市景観大賞」と「神戸市建築文化賞」、93年には「神戸建築100選」に選ばれた。

 しかし、阪神・淡路の揺れで建物や塀は倒壊。解体や整地を経て2000年、鉄骨造りのサザンモールがオープンした。れんがの壁の復活案は、開設から20年を超えた施設の大規模改修計画の中で持ち上がった。

 ただ、使われていたれんがは英国製。入手困難な上に相当の費用が見込まれた。代案を模索する中、職人が凹凸の出せる特殊な塗料で色を混ぜながら壁の一部に試し塗りをした。それを見た施設を所有管理する小泉製麻のグループ会社サザンモール六甲の植村浩史社長(50)は「色むらやつなぎ目など、まるで昔の壁のよう」と塗装での改修を決めた。

 地元の新在家南町地区では、酒蔵や神社など昔ながらの街並みを守るため、市や地域で建物の外観などに関する協定を結ぶ。改修では、2棟ある同施設北側建屋の北、西側面をれんが調に、南側建屋の壁は運営会社の企業ロゴにちなみオリーブ色に塗り替える。いずれの外観も協定の内容に合致しなかったが、元々れんが造りだった点や、往時の外観を知る委員などが賛同し認められたという。

 施設の改修は今年1月に着手。れんが調の壁面は、施設開業25周年を迎える12月のお披露目を目指す。植村社長は「れんがの壁を、上の世代には懐かしんでもらい、若い人には足を運んでインスタグラムなどに収めて楽しんでほしい」と話している。

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 「サザンモール六甲B612」に至る小泉製麻グループの商業施設は、紡績工場からの転換後、名称変更を重ねてきた。

 1981年に紡績工場の役割を終えた翌年、第1工場跡を活用した初代商業施設「六甲パインモール」が開業した。内部の柱の多くに使われた松にちなんでパインモールと命名。核テナントとして、スウェーデンの家具販売店「イケア」が入っていた。

 91年には「ROKKO23(ヴァントワァ)」としてリニューアルオープン。店名は、同社の創業年が明治23年だったことから、フランス語で23を意味するヴァントワァとした。

 サザンモールの「B612」は開業した2000年が、小説「星の王子さま」の作者サンテグジュペリの生誕100年だったことが由来。植村浩史社長の弟、小泉康史取締役が子どもの頃から同書のファンで、主人公の故郷の小惑星「B612」から名付けたという。

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