「はまってない中でしちゃってる」下位に沈むボルシアMGで板倉滉が向き合う“修正力”。「行くのをやめてもよかったんじゃないか」【現地発コラム】

ボルシアMGでプレーする日本代表DF板倉滉がアジアカップからチームへ戻って1か月以上が経った。クラブへ戻った直後の21節ダルムシュタット戦では早速のスタメンフル出場をすると、下位に沈むチームを助けるべく、健闘している。

ただ22節ライプツィヒ戦で累積5枚目のイエローカードをもらったことで、23節のボーフム戦は出場停止に。板倉不在のこの試合で、チームはここ最近で最高のパフォーマンスを見せる。

ボーフムの日本代表FW浅野拓磨が「うちのは全員が力を発揮できないと崩されてしまう戦い方。チームとしてなかなかそこがうまくいかなかったかなと思います」と振り返るように、ボルシアMGは相手のマンマーク守備をどんどん外しては、次々にチャンスを作り出す。終わってみたら5-2の快勝。リーグ6試合ぶりの勝利を挙げたのだ。

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サッカー界ではよく「勝っているチームは動かさない」と言われるし、その内容が良ければ尚更だ。だが、ジェラルド・セオアネ監督はその翌節の敵地でのマインツ戦(1-1)で日本代表DFをスタメンに復帰させる。

ホームではアグレッシブで、ダイナミックな試合ができているものの、アウェーではそれがうまく機能しないというチーム事情を考慮したということもあるだろう。だがそれ以上に、チームの中心として、板倉はとても大事な存在だという確かな信頼の表れでもある。

ボルシアMGの守備陣を見ると、1対1の守備に強いマンマーカータイプは多いが、板倉のようにスペースへのカバー、裏を取られた時のリカバー、ボールを持った時の展開力という点で、いわゆる“気の利いた”プレーをできる選手は他にいない。状況判断の適切さ、修正のバリエーションというところでは重要な存在と言える。

ゲーム中の修正力はサッカーにおいて頻繁に題材に上がるテーマだ。板倉もそのテーマと向き合いながら、試合に臨んでいる。マインツ戦後のミックスゾーンでは次のように話していた。

「そうですね、それはどのチームにおいても必要になってくると思う。もちろん相手も、自分たちを分析した中でくるし、自分たちも分析した中でいくけど、やっぱり試合の前と試合の中とは状況は変わってくる。相手の立ち位置も変わってくる中で、そこにどうやって対応するのか。こういうフルスタジアムだと声も通らないので、僕だったらディフェンスと中盤の選手でこう変えていくとか、そういうところもちょっとできたらなと」

マインツ戦では前半相手のアグレッシブなプレスと素早い攻撃に振り回される時間帯が続いていた。例えば、どういったアプローチができていたらもう少し安定させられることができたのだろう?

「やっぱり自分たちがアグレッシブに行きたいっていう思いがあるのか、はまってない中でそれをしちゃってる。(そうなると)うしろの自分から見た中で、なかなか付いて行くのが厳しい。ただ前が入ったら、後ろも付いて行かないといけない。

もちろん運動量でそこをカバーしないといけない部分もありますけどでも、今日でいったら、あれだけ押し込まれた時間帯が続いてたら、1回行くのをやめて、ブロック作ってもよかったんじゃないかなっていうのもある。それは結果論になってくるとも思うんで難しいんですけど。でも、そういうアイデアとかオプションっていうのを、試合の中でトライできたらよかったのかなというのは思います」

傷口を最小限度に押さえながら反撃の機会をうかがったり、相手の攻勢がやむ瞬間を見計らいながら、準備を進めておくための手だてを増やしておくというのは貴重な引き出しになるはず。ボルシアMGが下位から抜け出し、中位以上でフィニッシュするためにも、板倉の修正力は重要になってくる。

取材・文●中野吉之伴

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