友人たちは諦めなかった 起立性調節障害で転校、絶たれたバンドの夢再び 成田裕さん(青森・弘前市)

起立性調節障害を抱えながらも音楽に取り組む成田さん

 青森県弘前市の高校生成田裕(ひろ)さん(18)は、午前中に体調を崩しやすく、朝のうちに起きることができない症状がある「起立性調節障害」を抱えながらこの春、卒業を迎えた。約2年前に病気が原因で同市の弘前学院聖愛高校から通信制の高校へ転校。憧れていた軽音楽部での活動ができなくなったが、同部の友人たちが「もう一度一緒にやりたい」と成田さんを誘い再びメンバーに。2月中旬、青森市でともにステージに立った。

 成田さんは中学2年生の後半ごろから次第に朝に起きることができず、学校を遅刻しがちになった。調子が悪いと夕方になるまで起床できない日もあった。「だんだん学校に行きづらくなった」(成田さん)。体調を崩した理由が分からないまま中学を卒業した。

 高校入学後に診察を受けると起立性調節障害と分かった。1年生の夏に時間の融通が利く通信制のある日本航空高校(山梨県)に転校。聖愛高軽音楽部でギターを始めていたが、人前で演奏することなく学校を去ることになった。

 聖愛高で同級生だったドラムスの玉熊聖稀(しょうき)さん、ベースの川村栞葵(しおり)さんが2年生の夏、成田さんを再びバンドに誘った。他校の生徒がメンバーになる前例がなかったが「友達だし、むしろ自然な流れだった」(玉熊さん)と一緒に練習を重ねるようになった。

 その後、ボーカルに聖愛中3年の成田椛(もみじ)さん、シンセサイザーに同部顧問の下田葉月さん(33)も加えた5人組バンド「ユニークリー」として活動を始めた。

 卒業を控えた2月16日、体調不良で椛さんを欠いたが、青森市内のイベントに出演。若者に人気のバンド「King Gnu(キングヌー)」や昭和のアイドル中森明菜さんの曲を披露した。成田さんは何度も玉熊さんらと目を合わせながらリズムを取り、うれしさをかみしめながら演奏していた。

 成田さんはこの春から、症状と付き合いながら神奈川県の音楽大学に進学し、ジャズギターを専攻する。「通信制では友達もできなかった。バンドに誘ってくれて、いろんな人に出会えて、おかげで高校生らしいことができた」と笑った。

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