【色の名前クイズ】どっちが「東雲色(しののめいろ)」?

日本には古くから伝わる色の名前があります。名前から想像できるものもあれば、予想外なものも。ここでは『増補改訂版 色の名前事典519』より、あまり聞きなれない色の名前を取り上げ、クイズにしました。今回は「東雲色(しののめいろ)」。果たして、東雲色はどちらでしょうか?

東雲色は【A】or【B】?

「東雲」とは、夜明けの空が東方から徐々に明るんでゆく頃をあらわす古語です。東京では地名としても使われています。

さて、いずれが東雲色でしょうか? 次のページで、東雲色と、もう一色についても色名の由来を詳しく解説しています。

東雲色は【B】

東の空が夜明けの光に色づくのを思わせるほのかな黄赤色の染色名。曙色(あけぼのいろ)ともいいます。これも、夜明けの色に染まった空のような色を表現したものです。

平安時代からのピンク系の色を表す伝統的な色名は、紅花による染色であることを表す一斤染(いっこんぞめ)、退紅(あらぞめ)、薄紅(うすくれない)であったり、桜色、紅梅色、撫子色(なでしこいろ)のように、身近な花からとられたものがほとんどでした。近世になって初めて、曙や東雲などが色名の材料にされるようになったのです。

18世紀の終わりから19世紀の初め、年号では天明、寛政、享和にかけての時代は、古来の染織技術の発達が頂点に達した時期だったといわれています。新傾向の色名の多くはこの前後にできたようですが、曙色の名前は、もっと早い時代の曙染に関係があるようです。

それでは【A】は何色?

【A】は一斤染(いっこんぞめ)

「一斤染」とは、紅花の花1斤(約600g)で絹1疋(びき)(2反)を染めた染色の色のこと。その色は淡いピンクになります。

古代、紅花は大変に高価な染料で、それを用いた紅染も、濃い紅色になるほど価格は非常な高額になりました。そこで、濃い紅染の禁制には、一種の経済政策としての配慮もあって、一般の使用が禁じられていました。

それにもかかわらず、平安時代後期に、色の禁制の取り締まりがいちばん困難だったのも紅染、少しでも赤く染めようとする者があとを絶たなかったといわれています。

絹1疋を染める紅花の量を1斤と定めたことには、一般に使用が許される紅花の色を標準化するという意味もあったようです。この色より紅が濃くなると禁制とされたとのこと。当時のピンクは必ずしも、当人が好んで選んだ色とはいえなかったようです。

※この記事は『増補改訂版 色の名前事典519』(主婦の友社)の内容をWEB掲載のために再編集しています。


監修者
一般財団法人 日本色彩研究所

日本で唯一の色彩に関する総合研究機関。1927年画家・故和田三造氏により日本標準色協会として創立。1945年財団法人日本色彩研究所として改組。1954年、世界に先駆けて「修正マンセル色票」の色票化研究に着手し、諸外国の研究機関に寄贈するなど、長年にわたり先端的な研究を続ける。諸省庁、自治体からの要請への対処、JISの制定や関連色票の作成等への参画、ガイドラインの提案などに携わる。

© 株式会社主婦の友社