大手の「満額回答」うらやましい…2024春闘、地方の動きは限定的 中小企業「なかなか厳しい」

春闘に向けガンバロー三唱をする労働者ら=9日、鹿児島市のみなと大通り公園

 2024年春闘の集中回答日となった13日、物価高と人手不足を背景に、大手企業では満額回答が相次いだ。物価上昇に見合った賃上げは中小企業が多い地方に波及するのか。鹿児島県内では高水準の賃上げを決めた企業がある一方、価格転嫁が難しく、人手確保と経営の間で悩む企業も。労働者には期待と不安が入り交じる。

 県内では、すでに鹿児島銀行(鹿児島市)がベースアップと定期昇給を合わせ5%超の賃上げを発表。小売業のタイヨー(同市)も正社員を対象に平均5.7%アップを打ち出している。医薬品開発受託の新日本科学(同市)は年俸を6.4%上げる予定といい、規模の大きな企業で賃上げが広がる。

 一方、中小企業は悩ましい判断を迫られている。建設資材販売の今別府産業(同市)は賃上げを検討しているものの「経営を守るためにも価格転嫁できればいいが、競合がいるのでなかなか厳しい」と坂下浩一専務(66)。人材確保に向けて若手に重点を置くという。

 鹿児島市の人材派遣会社に勤める20代女性は、相次ぐ大手の満額回答に「給料が上がってうらやましい」と話す。「今の給料では貯金できない。上げられるなら上げてほしい」と期待しつつ「経営的には厳しそう」と苦笑いを浮かべた。

 警備業の契約社員として働く同市の男性(65)は「自分の給与が上がる気配はない。正社員以外にも広がってほしい」とこぼした。

 連合鹿児島によると、8日時点で報告のあった38労組の要求額は平均6.7%で、県内ではこれから労使交渉が本格化する。海蔵伸一事務局長(56)は「昨年は大手が上がったのに対し、中小には広がりきらなかった。少しでも追いつければ」と大手の結果を踏まえた回答を求めた。

(別カット)春闘に向けデモ行進する労働者ら=9日、鹿児島市

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