みちのく記念病院(青森・八戸市)殺人1年 死因記載の医師は「認知症」 病院側が遺族に説明

髙橋さんの遺影と生花が飾られている自宅和室の祭壇。家族が毎日、食事と菓子を供えている

 青森県八戸市の「みちのく記念病院」精神科病棟に入院していた髙橋生悦さん=当時(73)=が殺害された事件は、髙橋さんが亡くなってから13日で1年を迎えた。同日までに遺族が取材に応じ、「死因は肺炎」とする死亡診断書を書いた医師について「認知症になっているとの説明を病院側から受けた」と明らかにした。病院は取材に「お話しすることはない」としている。

 捜査関係者によると、病院はこの医師について事件発生当初の県警の調べに「認知症ではない」旨の説明をしていたという。

 遺族によると、死亡診断書を書いた医師について病院側から言及があったのは昨年9月。病院の担当者らが髙橋さん方を訪れた際、「診断書を書いた医師は認知症になり、入院している」と説明したという。

 遺族は今月9日に一周忌法要を行った。髙橋さんの妻(63)は「やることに追われ、あっと言う間の1年間だった」と振り返る。髙橋さんが市内の病院からみちのく記念病院に転院したのは2022年11月。通算1年以上の入院中、コロナ禍でほぼ会っておらず「今も生きていて入院しているのでは-と思うこともある」と遠くを見つめた。自宅和室の祭壇は「事件のことがはっきりするまで片付ける気持ちになれない」と言う。

 髙橋さんの次女(33)は「病院の担当者は家に来たが院長などが来たことはない。事件・事故のニュースで組織のトップが会見を開くのを見る。父が亡くなったこの事件はなぜ、責任者が何も語らないのか」と話す。

 県警は昨年4月、病院を家宅捜索し、カルテやパソコンなどを押収。医師や看護師らから事情を聴くなどし、捜査を進めている。

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みちのく記念病院殺人事件 2023年3月12日午後11時45分ごろ、八戸市のみちのく記念病院で、入院している髙橋生悦さんがベッド上であおむけに倒れているのを看護師が発見した。翌13日午前10時10分に死亡を確認。髙橋さんの家族は正午ごろ病院に到着、死因が「肺炎」と記載された死亡診断書を受け取った。同15日に県警が傷害致死事件として発表。県警は同28日、殺人容疑で同室の入院患者の男を逮捕した。県警は4月28日、事件後に速やかに警察に通報せず、死亡診断書に事実と異なる死因を記載した疑いがあるとして、医師法違反や虚偽診断書作成などの容疑で同病院を家宅捜索した。青森地検は7月14日、男を殺人罪で起訴した。今後、裁判員裁判で審理予定。

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