「苦渋の選択」浪江町の原発集団訴訟、東京電力と和解 提訴から6年…原告40人が亡くなる 福島

福島県浪江町の住民が、集団で申し立てていた「裁判外紛争解決手続き=ADR」が打ち切られたことを受けて、国や東京電力を訴えていた裁判で、14日、東京電力と住民の間で、和解が成立しました。

この裁判は、浪江町の住民721人が、国と東電に対し、原発事故での避難に伴う慰謝料など、およそ89億円を求めていたものです。住民たちは慰謝料の増額を求めたADRが、2018年に打ち切られたことを受け、提訴していました。

提訴から6年が経った14日、原告と東電の間で和解が成立し、国への訴えを取り下げました。

原告団・鈴木正一団長「苦渋の選択をしたが、原告団が一致して和解勧告を受諾することにしました」

賠償額は非公表ですが、原告側によりますと、中間指針を上回る賠償が支払われるということです。また、ADRによる和解を拒否した期待権の侵害も認められ、今後、東電による謝罪の場も設けられるということです。

鈴木正一団長「集団ADR期間中に864人の方が亡くなった。訴訟中も40人の仲間が亡くなった。(原告の意向確認調査で)一番多かったのが『一刻も早い解決を臨む』ということだった。これが苦渋の選択をした理由になります」

原発事故の集団訴訟で、和解が成立するのは、これで4例目です。

和解の成立を受け、東電は「紛争の早期解決を目指し真摯に対応してまいります」としています。

また、原子力規制委員会の山中伸介委員長は「引き続き、自然の脅威に謙虚に向き合い、規制の不断の見直しに努めてまいります」との談話を発表しました。

提訴から6年…原告40人が亡くなる

この裁判のきっかけは、2013年にさかのぼります。浪江町の町民およそ1万5000人が、東電に対し、慰謝料の増額を求める申し立てを行いました。これは「ADR」と呼ばれる手続きで、裁判をせずに和解を仲介するものでしたが、東電は5回にわたり受諾を拒んだため、2018年に手続きが打ち切られました。

和解を拒む東電を疑問視する声が相次ぎ、町民の中からおよそ700人が提訴に踏み切りました。そして、提訴から6年が経った14日、東電との和解が成立しました。原告側によりますと、和解勧告書では、コミュニティが壊されたことによる慰謝料のほか、ADRでの和解を拒否したことによる期待権の侵害も認めました。

原発事故から13年、提訴からは6年。裁判は区切りとなりましたが、提訴の後、40人の原告が亡くなりました。もっと早く解決できなかったか、今後設けられる謝罪の場で東電が何を話すのか、注目されます。

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