「ビビらずにプレーすれば、形ができていた」堂安律がプレミア強豪と対戦後に語った手応え「個の能力が高いのはわかってましたけど...」【現地発コラム】

日本代表MF堂安律が所属するフライブルクは2年連続出場となるヨーロッパリーグ(EL)の決勝トーナメント1回戦のファーストレグで、プレミアリーグの強豪ウェストハムにホームで1-0の勝利。結果だけではなく、セカンドレグへ勢いをつけられる納得のパフォーマンスを出せたことが大きい。

未知の世界への挑戦だ。昨シーズンも決勝トーナメント進出を果たしたフライブルクだが、イタリアのユベントス戦では自分達の力を発揮しきれなかった。相手へのリスペクトが強すぎたし、プレッシャーへの対処で後手に回ってしまった。健闘はしたものの、2戦合計0-3での完敗で幕を閉じた。

だが今季は違う。昨季の経験を経たことで、堂々としたプレーを展開しているのが頼もしい。プレーオフで対戦したランス戦がそうだったし、この日もウェストハムを相手に勇敢なプレーを見せる。直近のブンデスリーガでのバイエルン戦もそうだった。

最高レベルにリスクマネジメントをしながら、つねに勇敢に前へと出ていく。心と頭のチューニングがビシッと決まっている。各選手が焦ることなく、ダイナミックなプレーを心掛ける。試合で急に新しいことはできない。今できることに100%フォーカスし、それがチームとして見事なハーモニーを奏でているのだ。

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フライブルクのクリスティアン・シュトライヒ監督は試合後の記者会見で、広報から最初のコメントを求められると、しばらく黙り、それからゆっくりと語りだした。

「テーマは落ち着きと勇気だ。行ったり来たりのサッカーではウェストハム相手に厳しくなる。攻撃面で最初センタリングが多すぎた。あれではチャンスがない。その後グラウンダーのパスが増え、コンビネーションから惜しいチャンスを作り出すことができた。

ワイルドにではなく、コントロールされたゲーム展開に持ち込めた。守備もよかった。ウエストハムはボール奪取後の素早い攻撃が素晴らしかったが、GKアトゥブルのいいセーブもあり、うまく対処することができた。素晴らしいチーム相手に勝利ができた」

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強豪相手との連戦で好パフォーマンスが続いただけに、選手も手ごたえをつかんでいる。右サイドハーフとしてスタメン出場した堂安は82分に途中交代するまで、攻守にキレのあるプレーを連続で見せていた。ボール奪取回数は多く、瞬間加速するドリブルで相手守備陣を突破するシーンで度々スタジアムを沸かしている。

試合後のミックスゾーンではチームパフォーマンスとゲーム運びに満足しながら、試合での狙いを明かしてくれた。

「若干バイエルン戦と似たようなゲームというか、個の能力が高いのはわかってましたけど、なかなかチームとしてオーガナイズされたディフェンスをしてくるチームじゃないってのはわかってた。ビビらずにプレーすれば、形ができてるシーンが何個もあった。ミーティング等でいい話い合いができた中で、今日いいゲームができたのかなと思います」

「相手のキープレーヤーを抑え込めたというのも大事でしたし、向こうはあんまり起点を作れる選手が1人2人しかいないというのはあった。パケタであったりとか、クドゥスが持ったときに動き出すのはわかってますし。そこを厳しくっていうのはチームとして、狙いとしてきたかなと思います」

サッカーの移籍や市場価値などを網羅するサイト「トランスファーマルクト」によるとブラジル代表ルーカス・パケタの6500万ユーロを筆頭に市場価値の高い選手をそろえるウェストハムの総額は4億4600万ユーロにもなる。一方のフライブルクは1億8900万ユーロ。実に3倍近い差がある。

そうした差を感じさせないコレクティブなプレーで勝利に値するパフォーマンスを見せたフライブルク。ダイナミックにチームとしてつながり合い、局面で個々のエスプリが加わっていく。

「あとは自分たちの方が完全にコンディション的に良かったと思いますし、こっちが気持ちでも戦術的にも増していたので。1点と言わず2、3点差で勝てたゲームでもあったと思う。次に来週ロンドンなんで、もちろん展開は変わってくると思いますけど、いいゲームができたらと思います」

グループリーグで対戦した時にはアウェイの地で0-2と完敗を喫している。チームとしても、ドウアン個人としても心に期するものはあるだろう。積み重ねた経験が力になることを証明してきた。間違いなく難しい試合になる。

でも今のフライブルクと堂安ならば、この難題も解決してくれるのではないかと期待できるものがある。クラブ史上初となるヨーロッパリーグベスト8進出は決して届かないところではないはずだ。

取材・文●中野吉之伴

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