忘れた、学校に置いてきた…保護者を悩ます給食の箸、市町村で買いそろえられないの? 鹿児島市は6割が「持参」

学校が管理する木製の箸で給食を食べる児童たち=鹿児島市吉野町の吉野東小学校

 給食の箸を持参するか、自治体や学校が準備・管理するか-。鹿児島県内の自治体や学校で対応が分かれている。「持ってくるのを忘れる、学校に置いて帰るという児童生徒は多い。できれば自治体が買いそろえてほしい」。鹿児島市内の栄養教諭から南日本新聞にこんな声が届いた。

 栄養教諭の勤務校は、主に米が主食となる週3日、箸を持参する。「限られた給食時間。箸を忘れた指導に時間を割くより、食材の働きなどを伝えたい」と話す。

 国は、食器具について学校給食実施基準で「安全性が確保されたものであること」と規定。だが、給食を提供する自治体が箸やスプーンなど、どこまで用意するかの定めはなく、判断が分かれているようだ。

 南日本新聞の調べによると、県内43市町村のうち、鹿児島市を除く42市町村は給食センターや学校給食室で箸を管理。各市町村立の全小中学校に、給食とともに提供している。

 鹿児島市には6カ所の給食センターがあり、松元、吉田、喜入、郡山の4センターは箸を準備。独自に箸を購入した学校を除くと、全市立小中学校116校中75校と6割強が持参となっている。箸を提供しているのは小規模校が多く、理由は「家や学校に忘れる子がいる」が多数を占めた。

 市内で2番目に児童数が多い吉野東小(約1200人)は2020年、PTA会費で箸を購入した。「主食がパンでも、おかずによっては必要な日があって分かりにくい」などの声が保護者から寄せられたためだ。食後は調理員が手洗いし本数を数えた上で、給食室にある消毒保管庫で管理している。

 箸の提供は、市議会でも取り上げられたことがある。市教育委員会は「導入するとなると、洗浄機や消毒保管庫も必要。築40年程度の給食センターや学校給食室など、スペースに余裕がない既存施設では難しい」としている。

 元文部科学省学校給食調査官で淑徳大学看護栄養学部(千葉県)の田中延子客員教授(学校給食学)は「自治体や学校で箸を用意すると、洗い忘れなど衛生面の懸念はなくなる」と指摘。課題については「箸は折れたり曲がったりと、食器やスプーンに比べて頻繁に補充が必要となる」と話した。

箸の紛失がないか、洗浄後に数を確認する調理員=鹿児島市吉野町の吉野東小学校
給食で使っている木製の箸=鹿児島市吉野町の吉野東小学校

© 株式会社南日本新聞社