避けられぬ賃上げを利上げが追い打ち…マイナス金利解除、地方の中小企業に「あきらめ型倒産」増える恐れ

住宅ローン金利などが表示された鹿児島銀行の電光ボード=19日、鹿児島市金生町

 日銀がマイナス金利解除を決めた19日、恩恵を受ける鹿児島県内の金融機関からは歓迎する声が上がった。現場では金利上昇局面に備えた研修も進む。日銀が解除の根拠とした賃上げが進んでいない中小企業サイドには、今後の人件費の上昇に加え、利上げによる負担増への懸念が根強い。

 マイナス金利政策は、融資と預金の金利差で稼ぐ金融機関の収益を圧迫してきた。鹿児島銀行の松山澄寛頭取は「金融政策正常化に向けた第一歩であり、タイムリーな判断」と歓迎する。解除によって預金利息、貸出金利とも上がる方向になる。同行は「政策や市況等さまざまなことを考慮し決定していく」。南日本銀行も「判断材料を集めながら、時期も含めて慎重に判断する」とした。

 前回の利上げは2007年。以降は利下げが続き、ゼロ金利を経てマイナス金利となり「金利のある世界」を経験していない行員も多い。各行庫では、営業店向けの勉強会を開いたり、客からの問い合わせを想定した研修をしたりし、備えを進めている。

 消費者にとっては、住宅ローンの変動金利が上がる可能性がある。ファイナンシャルプランナーの瀬尾由美子さん(鹿児島市)は「固定に借り換えるにしても固定金利の方が高く、支払総額が上がることもある。年齢、家族構成、ローンの残り期間などを踏まえて検討しなければならない」と指摘する。

 転換期を迎えた金融環境について「金利以外のさまざまな要因で円や株相場は決まっている。日銀の決定にバタバタせず、様子を見るのも一つ」とした。

 借入金利が上がり、負担増加が懸念されるのは民間企業。県中小企業団体中央会の小正芳史会長は「中小企業の賃上げも避けられず、利上げとダブルで経営にのしかかってくる」と今後を不安視する。

 東京経済鹿児島支社の担当者は「地方では中央ほど賃上げは進んでおらず、マイナス金利解除は都市部との格差を広げる。時期尚早の判断」とする。「利息負担が経営に重くのしかかり、あきらめ型の倒産が増えるのでは」と見通す。

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