老後、ひとりでできないことが増えて介護が必要になったら?サポートやサービスについて、井戸美枝さんがアドバイス

高齢になって、ひとりでできないことが増えてきたら、暮らしはどうなるのでしょう。今、毎月支払っている介護保険からは、どのようなサポートがあるのでしょう。イザというときのための備え方の後半です。ファイナンシャルプランナーの井戸美枝さんに教えていただきましょう。

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【63歳Lさんの悩み】
ひとり暮らしで、子どもはいません。将来、病気や介護が必要な暮らしになったときが心配です。介護保険からどのようなサポートが受けられるのでしょうか。

【井戸さんのアドバイス】
・介護保険について、きちんと知っておきましょう。
・高齢者をサポートする自治体のサービスをチェック!

介護保険について知っておく

高齢になってひとりでできないことが増えてきたとき、頼りになるのが「介護保険」です。どんなサービスがあって、利用するにはどんな手続きが必要か、元気なうちにきちんと理解しておきましょう。

介護保険とは

介護保険は、介護を必要とする人を社会全体で支えるためにできた制度です。

原則65歳以上の人が利用できますが、がんの末期など特定疾病で介護が必要な人は40歳から利用が可能です。

介護が必要と認められると、自宅で食事や入浴などを介助や、掃除や買い物などを援助してもらうなど、さまざまなサービスが実費の1~3割で受けられます。

ほとんどの人が1割負担ですが、所得によっては2~3割負担になる人もいます。自分が第一号被保険者(65歳以上)になったときの所得を想定して、負担割合を予想しておきましょう。

自己負担の判定基準

出典・厚生労働省「給付と負担について(参考資料)」
参考資料2 給付と負担について(参考資料) (mhlw.go.jp)

介護サービスの申請方法

介護サービスを受けるには、住んでいる市区町村の窓口か地域包括支援センターに、「要介護認定」の申請をしなければなりません。

申請すると、市区町村の職員や保健師などが自宅を訪問して、聞き取り調査(認定調査)が行われます。あわせて、市区町村からの依頼で、かかりつけ医が「主治医意見書」(心身の状態についての意見書)を作成。2つに基づいて、要介護度が決定されます。

介護サービスの内容

認定結果は、要支援1~2、要介護1~5の7段階、および非該当にわかれ、それぞれに応じた介護サービスが利用できます。

具体的には、介護支援専門員(ケアマネジャー)がその人にあったケアプラン(介護サービス計画)をたて、実現のために、実際にサービスを行うスタッフ、必要に応じて在宅医療を行う医師や看護師などと連絡をとって、調整してくれます。

サービス例

身体介助…トイレや食事、服薬、入浴、着替え、歯磨き、外出時の付き添いなど介助
生活援助…居室の掃除、洗濯、食事の用意や後片付け、生活必需品の買い物などの援助
福祉用具の貸与…車椅子、歩行補助用の杖、介護用ベッドなどの貸与
特定福祉用具の購入…ポータブルトイレ、入浴用品などの購入
住宅改修…転倒防止用の手すり、バリアフリーなどリフォーム費用の支給

居宅サービスの1か月あたりの利用限度額

サービスにかかる利用料 | 介護保険の解説 | 介護事業所・生活関連情報検索「介護サービス情報公表システム」 (mhlw.go.jp)

※実際にかかる費用は、上記の金額の1~3割。

非該当ですぐに介護の必要がなくても、身体的に不安がある人は、「基本チェックリスト」を受けることが可能。健康状態や運動機能、認知症の有無などをチェックでき、必要に応じて、自治体が実施する生活機能を維持するための介護予防サービスや、自立支援のための生活支援サービスが受けられます。

介護保険制度は、実態にあわせて少しずつ変化しているので、今後も情報をチェックしていきましょう。

自治体のサービスを知っておく

多くの自治体で、ひとり暮らしの高齢者をサポートするサービスを実施しています。非該当(自立)の判定が出ても自治体のサービスがあることが多いです。

民間にもさまざまなサービスがありますが、費用が割高になりがち。自分が住む自治体でどんなサービスがあるか、冊子などがあるので、調べておきましょう。

見守りサービス

ひとりで、家の中で倒れても気づけるように、ほとんどの自治体で見守りサービスを実施しています。

たとえば、自宅に火災感知器やガス漏れ感知器、生活リズムセンサーを設置。熱やガス漏れを感知したり、具合が悪いときなどにボタンを押すと、警備会社の人と電話がつながり、状況に応じて、警備員がかけつけてくれたり、119番通報してくれます。

また、トイレなど日常よく使う扉の人感センサーを設置して、24時間動きがないと、役所や受信センターに通報してくれるシステムも。

月額利用料は、住民税非課税の人では700~800円程度、課税世帯は1700~1800円前後で利用できます。

ほかにも、食品の宅配業者や新聞や乳飲料の配達員などと提携して、家の様子をさりげなく見守る方法をとりいれる自治体も多数。しばらく姿をみかけなかったり、郵便物がポストにたまっているなどの異変があると、自治体に連絡してくれます。

配食サービス

多くの自治体で、高齢者向けの配食サービスを行っています。

条件は65歳以上のひとり暮らし、高齢者のみの世帯、要介護認定を受けている人など、自治体によってさまざま。配食サービスを使って、安否を確認するサービスを行う自治体も少なくありません。

費用は民間のサービスより割安で、1食400~600円程度が多いようです。
ただし、民間の配食サービスのような「塩分控えめ」「嚥下の弱い人向け」などのきめこまやかな対応はないので、内容をよく確かめて利用しましょう。

家事支援サービス

介護保険の家事支援は、要介護者が日常的に過ごす部屋などに限定されているため、庭の掃除や換気扇の掃除などはやってもらえません。独自の家事支援サービスを行う自治体もあるので、チェックしてみましょう。

また、シルバー人材センターでは、樹木の剪定、除草、ふすまや障子の張替えなどのほか、庭の掃除などの家事手伝いも依頼できます。家事手伝いで、1時間あたり1000~1500円程度で利用が可能(センターや作業内容で異なる)。

近くのシルバー人材センターで、どんなことがいくらくらいで頼めるか、確かめておくといいでしょう。

ほかにも、要介護が高く外出が困難な人向けに、理容師や美容師が自宅に訪問してカットしてくれるサービス、ひとり暮らしの人向けに布団洗いと乾燥、消毒をしてくれるサービスなどがある自治体も。

また、地域のボランティアやNPOがお弁当の販売や居場所を提供するサロンを開いていることもあります。元気なうちに、一度覗いてみてもいいですね。

プロフィール
井戸美枝
いど・みえ●ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、社会保険労務士、国民年金基金連合会理事。生活に身近な経済問題、年金・社会保障問題が専門。「難しいことでもわかりやすく」をモットーに、雑誌や新聞に連載を持つ。近著に『フリーランス大全』(エクスナレッジ)。『親の終活 夫婦の老活 インフレに負けない「安心家計術」』(朝日新書)、『一般論はもういいので、私の老後のお金「答え」をください!増補改訂版』(日経BP)など著書多数。
ホームページ:http://mie-ido.com
Twitter:@mieido


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