旧長崎医科大被爆遺構 旧通用門の門柱保存へ 生化学教室跡、感染症研究施設建設で撤去へ

旧通用門の門柱と基礎(写真中央、長崎大提供)

 長崎大は21日、医学部坂本キャンパス(長崎県長崎市坂本1丁目)の記念講堂南側で、原爆で壊滅した旧長崎医科大の旧通用門の門柱と基礎が見つかったと発表した。国指定史跡の旧正門と同様、長崎大は「貴重な被爆遺構」として現状保存する方針。
 同大によると、同キャンパス内に新たな擁壁を整備するため、のり面を掘削した際、旧通用門の門柱と基礎を1月に発見。市によると、古写真などと照合した結果、被爆当時に存在していた門柱と考えられ、爆風で倒れた可能性もあるという。今後、市と協議して説明板などを整備する予定。
 一方、同キャンパスの感染症研究施設の建設予定地で昨年10月に見つかった旧長崎医科大基礎キャンパスの建物跡とみられる遺構について、長崎大は生化学教室と資料室の当時の配置図とほぼ一致したと発表。しかし、建物跡の基礎部分や遺物に、被爆による火災や爆風によるひび割れの痕跡はなく、被爆当初の痕跡を残す遺構と言い難いと判断。記録保存した上で遺構を撤去し、計画通り感染症研究施設の建設を進める方針。
 遺構が見つかったのは昨年10月、熱帯医学研究所西側の駐車場部分。長崎大などは昨年12月から今年2月22日まで、約870平方メートルの範囲で発掘調査を実施。基礎部分や瓦、れんが、ガラスなどの遺物が見つかった。
 同大は今後、遺物の年代分析や調査結果の整理を進め、報告書として公開する。調査資料や見つかった資料の一部は学内にスペースを設置して展示する予定。
 旧長崎医科大は爆心地から約600メートルに位置し、原爆で898人が犠牲になった。基礎キャンパスは木造の建物が大半で、生化学教室はコンクリート製の実験室など一部を除いて焼失し、生徒ら約60人が死亡した。

生化学教室と資料室の基礎部分の全景(長崎大提供)

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