吉村芳生展・内覧会 写真と見まがう緻密さ 招待客を圧倒

新聞に描かれた自画像が壁一面に並ぶ会場=長崎市、県美術館

 鉛筆や色鉛筆を使った緻密な作業を積み重ね、数多くの作品を残した現代アートの奇才、吉村芳生さん(1950~2013年)の画業の全貌に迫る「超絶技巧の鉛筆画 吉村芳生展」(長崎新聞社など主催、佐藤和眼科医院特別協賛)が22日、長崎県長崎市出島町の県美術館企画展示室で開幕する。長崎新聞創刊135周年記念。21日、開場式と内覧会があり、写真と見まがう作品約500点が公開された。
 吉村さんは山口県防府市生まれ。身の回りの風景を描いた作品や、他に例を見ない2千枚を超える自画像、花を描いた色彩豊かな大作など生涯で手がけた作品はさまざま。だが作品への執着や独特な制作方法の基本は一貫し、目に映るものを直接描かなかった。写真に撮って細かく区切った升目を一つ一つ機械的に描き写すなど、必ず写真や版を介在させたという。
 同展では、新聞に描かれた自画像シリーズが壁面を埋め尽くす空間も出現。全長10メートルを超える色鉛筆画の大作や、東日本大震災で亡くなった人の魂を藤の花に込めて描いた作品などが並ぶ。迫力に圧倒された招待客らは近寄って、吉村さんの仕事の細かさに見入り「『きれい』『写実的』などの言葉では言い表せない」と感動していた。
 同展を監修した東京ステーションギャラリー館長、冨田章さんによる作品解説もあり「吉村は絵の全体の様子を見ず、升目の中だけを見てどんな大きな絵でも完成させた。この独特の制作方法がこの画家の最大のミステリーであり、最大の魅力」などと語った。
 同展は5月12日まで(4月8、22日は休館)。

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