除雪は家の周りだけ、農作業には“さるっぱがま” 地域のルール・文化記した「集落の教科書」移住女性が執筆

昨年度、福島県内に移住した人は1964世帯2832人で、過去最多を更新しました。県外からの移住者が増える中、西会津町の限界集落で作られたのが「集落の教科書」です。移住者が、移住先に馴染みやすくするためのもので、地域のルールや文化などが掲載されています。

除雪は、玄関や駐車場周りだけでOK。共同作業に参加できない時は、かわりに5000円。

西会津町の「集落の教科書」には、地域の伝統文化やルールなどが掲載されています。作者は地元の人ではありません。自らも移住者で、フリーライターの西道紗恵さんです。

西道紗恵さん「自分のような外から来た人間でも、地域になじみやすかったりお互いを傷つけなかったり、いいクッション材になるものだと思います」

4年前に移住 距離の縮め方に悩んだ過去

兵庫県出身の西道さんは、4年前の春に地域おこし協力隊として西会津町にやってきました。西道さん自身、移住して間もない頃は、地域の人たちとの距離の縮め方に悩んだことがあるといいます。

西道さん「大阪に住んでいた頃なんか、隣近所、誰が住んでいるかわからへん。回覧板もない。そういう地域のつながりがあまりないエリアに住んでいた」

だからこそ、集落の教科書には大きな意味があるといいます。西会津に来ておよそ4年。時間をかけて交流し、いまでは近所の人と自宅を行き来する仲になりました。

近所の人「きれいで美人で優しくて、いいんじゃないの。それ以上ありませんよ。(西道さんが来て)村全体が明るくなりましたよ」

西道さんは、移住者の先輩としても、これからやってくる人たちが、少しでも早く町になじめるよう教科書作りを始めました。

「集落の自慢は?」住民に直接取材

「集落の教科書」には、西会津町の限界集落、中町集落の情報が掲載されています。去年7月頃から取材を始め、中町集落の住民に集まってもらったこともありました。

西道さん「中町集落のいい所、これは中町の自慢だなと思う部分があれば教えてほしい」

中町集落の住民「空気がよくて水がおいしい、お米もおいしい。それは自慢できるところ」 中町集落の住民「『お茶飲んでかっせ』って(声をかけ合う習慣)。行ってみようかなと思える。自分から行くのは大変なんですけど」

自分たちの文化や習慣を知ってもらう、移住してくる人だけでなく、受け入れる側にとっても教科書は必要な存在になりそうです。

取材を始めておよそ4か月が経った去年11月。より深い話を聞くため地元住民の自宅を訪ねました。石井アツ子さん(83)は、結婚をきっかけに中町集落にやってきて、およそ60年経ちました。

地域の歌に方言、雪国の「マストアイテム」も掲載

石井さんには、これからも大切にしていきたい中町地区の文化があるといいます。それが、この地区で歌われる「御詠歌」です。

「朝日さす♪夕日輝く♪」

集落を守ってくれているお地蔵様に感謝の気持ちを込めて歌われる「御詠歌」には、譜面はありません。代々歌い継がれているのです。石井さんはこの歌を大切にしています。西道さんは、教科書にはこのような地域の文化も掲載していきたいといいます。

石井アツ子さん「感謝しているんだ。他から来て一生懸命やってくれて、頭が下がってばかりいる」

完成した「集落の教科書」はおよそ50ページ。町内の移動手段や、「おらほ=私の地域」、「かんまがす=かきまぜる」などの方言、「菅笠」や「さるっぱがま」など、自然に囲まれた暮らしならではの服装も知ることができます。

作者の西道さんは「移住したときのギャップを少なくするため、いいところだけでなく、そうでないところも伝わるような内容で記事を書いた」といいます。

「集落の教科書」は、移住者が増えるきっかけに、さらには地域の文化を守ることにもつながっていくかもしれません。

© 株式会社テレビユー福島