教員残業代、福井県内の私立高校で見直し相次ぐ 「働かせ放題」に批判、公立に先んじて改善

教員の残業代に関する規定を見直した(右上から時計回りに)福井工大福井高校、北陸高校、仁愛女子高校

 福井県内の私立高校で教員の残業代を見直す動きが相次いでいる。本来は一般企業と同様に時間外労働に対し労働基準法で定める割増賃金を支払う必要があるが、公立学校に準じて一定の調整額のみ支給する形が常態化していた。教員の処遇や労働環境が問題となる中、公立に先んじて改善を急いでいる。

 教職員給与特別措置法(給特法)は公立学校の教員に対し、残業代の代わりに月給の4%(月8時間相当)の「教職調整額」を支給すると規定。現場からは「定額働かせ放題」と批判が上がっている。文部科学省は22年末に有識者会議を設置するなど見直しに着手したが、結論は示されていない。

 一方、学校法人が運営する私立高は本来、法定時間外の夜間・休日の勤務に対して時給の1.25倍以上の割増賃金を支払う義務がある。ところが、県内の全日制私立高5校(北陸、仁愛女子、福井工大福井、啓新、敦賀気比)は、いずれも月給に調整額4%を上乗せする公立学校と同様の仕組みが慣例となっていた。

 近年、一部の学校に労働基準監督署の調査が入ったほか、職員組合の改善要望の強まりを踏まえ、相次ぎ見直しに踏み切った。

 北陸は2022年4月支給分から調整額を10%に引き上げ、手当を除く支給総額に「月45時間分の固定残業代を含む」と規定。仮に残業時間が短くても同額の調整額を支払う。仁愛女子も23年2月から調整額を12%に変更し、同様に一定の固定残業代を含むとした。福井工大福井は21年4月に調整額を廃止し、法定の割増賃金を支払う体系に改めた。

 敦賀気比は見直しに向け議論中とし、可能な限り早く方向性を固める方針。啓新の事務担当者は「(繁忙期の勤務時間を長くするなど)変形労働時間制を活用し柔軟な働き方にしている。見直しの議論は現時点ではないが、公立の動きを注視している」とした。

 既に見直した3校は、教員自身の申告やタイムカードなどで勤務時間の管理を徹底する考え。事務担当者の一人は「残業代は本来支払うべきものであり、正当な改善」とした上で「教員自身にも業務効率化を促すきっかけにしたい」と話した。

ダウンサイジングに保護者理解も必要

 内田良・名古屋大学大学院教授(教育社会学)=福井県福井市出身=の話 子どものためには給料も労働時間も関係なく働くべきだという古い考え方が公立私立を問わず支配的だったが、限界に来ている。人手や資金に余力がない中、教育サービスは縮小できず、私学の経営者は苦慮している。学校行事や部活動などを無理のない規模にダウンサイジングする改革を進める必要があり、保護者側の理解も求められている。

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