園芸店で求めた苗を咲かせるのも楽しいけれど、タネから育てる花には格別の楽しさがあります。発芽の喜びや、小さな苗が生育する驚き、初夏から秋まで長く咲き続ける花もたくさんあります。この春はタネから育てて、夏に色とりどりの花々を咲かせてみませんか。
★寄せ植えが見違えるコツ★
はじめてでも、ベランダでも、タネまきはできる!
4~5月は夏に咲く花のタネまきシーズンです。サルビアやマリーゴールドなどは、春にタネをまくと晩秋まで長く咲き続ける一年草。花が終わるころには、秋から晩春まで咲くパンジーなどと入れ替え、一年中途切れなく花が楽しめます。
タネをまくと早いものなら5日~1週間で発芽します。かわいらしい双葉(子葉)が土を持ち上げて開くさまは、何度見ても嬉しいもの。小さくて大きな生命力あふれるさまに感動できます。さらに弱々しい幼苗が見事な花を咲かせるまでの、ハラハラドキドキする日々を楽しみませんか。
はじめての方はタネが比較的大きくて扱いやすいジニアやマリーゴールド、センニチコウなどから始めるとよいでしょう。ベランダガーデナーさんなら、大きな鉢に直まきできて育苗スペースが必要ない、ヒマワリやルピナスなどがおすすめです。
カリフォルニアポピーやエスコルチアなどとも呼ばれるハナビシソウのように、苗ではほとんど流通しない花も、タネなら入手できます。育ててみたい花は、ネットでタネを探してみませんか。タネから育てると、ガーデニングの楽しみの幅がグッと広がります。
この春、タネから育てたい一年草8選
カラフルな花が長く庭を彩る【ジニア】
開花期/6~10月 草丈/20~100㎝
花径3~4㎝の小花を群れ咲かせるリネアリスという華奢な矮性種から、花径10㎝もの八重咲きで草丈100㎝になる品種まで、バラエティー豊か。和名は百日草というように、花期の長さも特徴です。直径10㎝ほどのポットにタネ3~4粒をまいて、1~2株に間引いて育てます。
夏空に映える元気印の花【ヒマワリ】
開花期/7~8月中旬 草丈/30~300㎝
ヒマワリは太い根が真下に伸びる直根性なので、タネをまいたら植え替えずに育てる直まきができます。高性種は地植えなら30~40㎝間隔で、鉢植えなら直径30㎝ほどの鉢に1~2粒タネまきすると、10~15日で発芽。草丈100㎝ほどで分枝した茎に、いくつかの花をつけるタイプもあります。
真っ赤な花も涼やかな青花も【サルビア】
開花期/6~11月 草丈/30~130㎝
真っ赤な花が目を引くスプレンデンスやコッキネア、ブルーセージとも呼ばれる涼しげなファリナセアなどの仲間があります。いずれも花が終わったら花穂を切り戻すことで、二番花が咲きあがり晩秋まで楽しめます。多年草のサルビアは高温多湿に弱いものもありますが、これら一年草は暑さに負けません。
暑さが大好きで何度も咲く【マリーゴールド】
開花期/4~11月 草丈/20~100㎝
高性で大きな花を咲かせるアフリカン種、コンパクトでよく分枝するフレンチ種、こんもり茂るメキシカン種などがあります。害虫防除のコンパニオンプランツとして、トマトなどと一緒に植えることも。花が終わったら茎を節の上で切り戻すと、脇芽が伸びて何度も花が咲きます。
ドライフラワーでも楽しめる【センニチコウ】
開花期/6~11月 草丈/30~100㎝
花に見える部分は小さな苞の集合体で、赤やピンクや白などのキャンディーみたいな愛らしさ。苞は散らずに色も長く残るので、たくさん咲かせてドライフラワーにも。暑さだけでなく乾燥にも強く、夏花壇の味方。発芽適温が高めなので、タネまきは5月になってから。
花苗はなかなか手に入らない【ハナビシソウ】
開花期/5~6月 草丈/30~60㎝
カリフォルニアポピーやエスコルチアとも呼ばれ、大きな花びらが光を受けて美しい花。ただ、花苗はあまり流通しないのでタネから育てるのがおすすめです。発芽適温の20℃でまくと、1週間ほどで発芽します。ヒマワリなどと同じ直根性なので鉢や花壇に直まきを。
涼しげな花穂が次々にあがる【アンゲロニア】
開花期/6~10月 草丈/30~80㎝
ピンクや白や紫などの涼しげな花が穂状に咲いて、夏花壇のアクセントになります。花穂の下の節には次の花茎がすぐに伸びだすので、花が終わったら切り戻すことで秋まで次々に開花。夏の暑さや強光線によく耐えますが、やや日陰気味の場所でも育ちます。
手間いらずの色鮮やかなリーフ【コリウス】
観賞期/6~10月 草丈/30~80㎝
シソの仲間で暑さに強いリーフ(葉もの)です。バラエティーに富んだ鮮やかな葉色で花より大きいから目立ち、花がら摘みなどの手間もかかりません。色違いのコリウスだけを組み合わせたり、ほかの草花との組み合わせも◎。伸びたら、切り戻して草丈が調整できます。
春のタネまきはヤエザクラが咲くころに
春のタネまきは気温が20℃以上に安定してきたころ、ヤエザクラが咲くころに行います。大きなタネや直根性の草花は鉢や花壇に直まきできますが、一般的には育苗用の小さめのポットなど(底穴をあけたイチゴパックでも)に、タネまき用土を入れてまきます。
タネまき用土とは、タネをまいて育苗したりさし木をするための用土です。発芽したばかりの幼苗は病害虫に弱いので消毒されていて、細い根が育ちやすいように細かい粒子に揃えられています。
よく湿らせた用土にタネをまき、発芽するまでは乾燥しないように管理しましょう。最初に双葉が展開して、その後に本葉が繰り出します。本葉が5枚ほどになったら、よく育っている苗を選んで、もう少し大きなポットなどに移植します。
小さなポットで育ててから大きなポットに移植すること(鉢上げ)で、根がよく張って丈夫な株に育ち、花をたくさん咲かせる株に充実します。小さな幼苗のうちに花壇などに植えつけると、病害虫の被害にあいやすいので気をつけて。
鉢上げしたばかりの幼苗はひょろひょろして頼りない感じかもしれませんが、梅雨入りまでには根をしっかり張って、花壇や鉢に定植できます。早いものは咲き始めて、梅雨明け後の厳しい暑さのもとで庭やベランダをカラフルに彩ってくれることでしょう。
おまけ
タネから育てるとコスパも抜群! まききれなかったタネは密閉容器で冷蔵保存できます。経年で発芽率は落ちますが、意外に古いタネも発芽してくれるので、試してみてください。